韓国宇豆峯神社は豊前国田河郡に所在した式内社の辛国息長大姫大目命神社(現・田川郡香春町所在の香春神社)との関連が指摘されている。まず、豊前国田河郡の辛国息長大姫大目命神社についてであるが、『豊前国風土記』(逸文)および大宝二年(七〇二)の豊前国戸籍断簡において「秦部」が全体の約四九%を占めていることからもわかるように、辛国息長大姫大目命神社は豊前に多く居住していた朝鮮半島渡来系の人々が信奉していた神であったことは推定される。とすると、韓国=辛国であり、大隅国の韓国宇豆峯神社と豊前国田河郡の辛国息長大姫大目命神社との二社は祭神で深くむすばれていることがわかる。また大隅国に韓国(辛国)をその名称に冠する神社が古くから式内社として所在することは和銅七年(七一四)に豊前国から大隅国に移住した人々たちがかつて豊前国で祭っていた祭神を大隅国の国府周辺に勧請し、守護神として奉祀した結果によるものであろう。
以上から、八幡神の性格を持つ鹿児島神社と韓国(辛国)をその名称に冠する韓国宇豆峯神社が古くから式内社として大隅国に存在するのは和銅七年に豊前国から二〇〇戸、約五〇〇〇人の人々が大隅国に移住した痕跡の一つと考えられる。また、大隅国府の位置から、両式内社の配置をみると、現在の国分平野のほぼ中央部に国府が所在し、平野の東端に韓国宇豆峯神社、西端に鹿児島神社が位置し、両式内社は国府の東西を守護する配置をしていることもそのことを裏付ける。