京築地方を画(かく)する自然環境は、北は周防灘、東は山国川、西と南は山岳によって画されている。修験道が繁栄した中世以降に成立したと思われる英彦(ひこ)山を中心とする豊前六峰と称された山々は、この山岳のなかに存在する。英彦山霊仙(りょうせん)寺・求菩提(くぼて)山護国寺・檜原(ひばる)山正平寺・松尾山医王寺・福智山・普智山等覚(とかく)寺がそれであり、いずれも天台密教系に属する。このうち、英彦山、求菩提山、普智山については考古学的調査が行なわれていて、古代末期にさかのぼる経塚遺跡などが知られている。それらの成果から、京築地方の古代山岳信仰の概要をうかがってみよう。