第一節 京都平野の荘園と村

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 古代より条里(じょうり)が施行された京都平野には、第一章にて概略を述べたように多くの荘園が成立していた。こうした荘園群は市域南部の国衙(こくが)に隣接したものと、北部に濃密に分布する宇佐宮(うさぐう)もしくは弥勒寺(みろくじ)に大別される。行橋市域は文書史料に恵まれており、近隣地域に比べると個々の荘園の歴史を詳細に跡付けることができる。また現在にいたるまで脈々と営まれてきた水利や農事に関する慣習、祭礼、田や畠の一枚一枚に付された小地名にも、人々の歴史を窺い知る重要なヒントが隠されている。本節においては、市域内の代表的な六つの荘園に着目し、そこに刻まれた歴史を読み解き、中世村落の生活世界を考えてみたい。