2 羽根木古屋敷(はねぎふるやしき)遺跡(行橋市大字羽根木字古屋敷ほか)

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 古墳時代中期~後期と中世(平安時代末から鎌倉時代頃)に断続的に営まれた集落遺跡で、一二~一三世紀代の平安時代末から鎌倉時代のものを主体としている。
 調査は、平成一一(一九九九)年一〇月から平成一二(二〇〇〇)年三月まで、行橋市教育委員会により、発掘調査が実施された。工事により遺構が影響を受ける約七五〇〇平方メートルについて記録がとられた。調査地は、旧豊前国仲津郡に属した地域。遺跡は、今井、羽根木、金屋の三地区の境に分布する。中世に繁栄したとされる祓川河口周辺の港湾「今居津(今井津)」にほど近い立地で、西側に羽口川、東側に祓川が流れる。周防灘に河川が注ぎ込む河口付近を望む立地。標高は三~五メートル前後の微高地上である。調査地の南側に羽根木地区の村社である日吉神社が鎮座する。検出された遺構は、井戸群約五〇基(写真2)を中心に、竪穴住居跡、溝状遺構、土坑、掘立柱建物跡、柱穴群である。特筆されるのは、井戸群、そして、生産に関わる遺物・鞴(ふいご)の羽口の出土である。国産陶器、貿易陶磁(中国製・朝鮮製)、宋銭、滑石製石鍋など。古墳時代でも、朝鮮半島系遺物である陶質土器、軟質系土器が出土し、物流を考古資料から知る上で重要な遺跡である。
 
写真2 羽根木古屋敷遺跡 井戸(SK96)
写真2 羽根木古屋敷遺跡 井戸(SK96)

 1号墓からは、白磁椀Ⅳ類・Ⅴ類、土師器小皿四枚、湖洲鏡一面、鉄釘数本が出土し、木棺墓と考えられる。一二世紀後半代(写真3)。2号墓からは、青磁椀(龍泉窯系Ⅰ-4b類)一、土師器小皿四枚が出土。年代は一二世紀後半代。当遺跡の西側に、「羽口川」が流れる。南西側には、「カシヤシキ(鍛冶屋敷)」地名があり、生産遺構が分布すると推定される。
 
写真3 羽根木古屋敷遺跡1号墓(SK213)
写真3 羽根木古屋敷遺跡1号墓(SK213)