しかしながら、枡が大きく改定されたという理由から、中身の年貢量まで増大すれば、増税ということになるから大騒ぎとなり、百姓一揆さえ起こりかねない。そこで小倉藩では、小倉枡での物成を基準とし(年貢量を変えずに)、計算によって京枡で物成高を表示することにした(これを京枡物成という)。「郡典」によれば、換算は次のように行ったという(換算法参照)。
小倉枡・京枡の換算法
1.小倉枡を京枡に換算する方法
小倉枡の1升は京枡の0.9641升だから
計算式は
小倉枡の物成×0.9641
2.京枡物成(賦課税込み)を小倉枡の物成に換算する方法
京枡物成1.30733升は小倉枡の1.26040268升だから
計算式は
京枡物成×1.26040268÷1.30733
「郡典私志」P.18より作成
1.小倉枡を京枡に換算する方法
小倉枡の1升は京枡の0.9641升だから
計算式は
小倉枡の物成×0.9641
2.京枡物成(賦課税込み)を小倉枡の物成に換算する方法
京枡物成1.30733升は小倉枡の1.26040268升だから
計算式は
京枡物成×1.26040268÷1.30733
「郡典私志」P.18より作成
小倉枡の一石は京枡では九斗六升四合一勺であるから、小倉枡から京枡への換算は、〇・九六四一を掛ければよい。京枡物成を小倉枡の物成に換算する場合は、京枡物成の高に一・二六〇四〇二六八を掛けて一・三〇七三三で割ればよい。なお、一・二六〇四〇二六八という数値は、例2に示すように、付加税を加算した京枡物成高の、村高に対する倍率である。また、付加税は三斗七合三勺二才八弗余であるが、計算の便宜上二弗を加えて三斗七合三勺三才にしたという。この計算例で付加税を加算した物成高を掲げているのは、村方にとっては、付加税を加算した現実の上納高こそが問題であったからであろう。
そこで、〇・九六四一、一・二六〇四〇二六八、一・三〇七三三という係数、除数を覚えていれば、計算は簡単であった。とくに一・二六〇四〇二六八については「十二六下四下二六八」と覚えた(郡典)。「下」は一桁下がる、ゼロという意味であろう。ただし、これは帳簿上の操作に必要な数字であるから、一般の百姓にはほとんど縁がない数値であったと考えられる。