小倉枡と京枡

360 ~ 362 / 898ページ
 寛文九年(一六六九)、幕府は公定枡を京枡に統一すると発表した。そこで小倉藩においても、同一一年から年貢をはかる枡を小倉枡から京枡に変えた。小倉枡は深さ二寸五分(約七・六センチメートル)、縦横の長さ五寸(約一五・二センチメートル)、容積六二・五立方寸(一・七四リットル)で、京枡はそれぞれ二寸七分(約八・二センチメートル)、四寸九分(約一四・八センチメートル)、六四・八二七立方寸(約一・八リットル)だった。京枡の容積の方が六四ミリリットルほど大きいことになる(写真2参照)。
京枡(深さ2寸7歩、方4寸9歩)
京枡(深さ2寸7歩、方4寸9歩)
小倉枡(深さ2寸5歩、方5寸)
小倉枡(深さ2寸5歩、方5寸)
  写真2 京枡・小倉枡(北九州市立自然史・歴史博物館所蔵)

 しかしながら、枡が大きく改定されたという理由から、中身の年貢量まで増大すれば、増税ということになるから大騒ぎとなり、百姓一揆さえ起こりかねない。そこで小倉藩では、小倉枡での物成を基準とし(年貢量を変えずに)、計算によって京枡で物成高を表示することにした(これを京枡物成という)。「郡典」によれば、換算は次のように行ったという(換算法参照)。
 
小倉枡・京枡の換算法
1.小倉枡を京枡に換算する方法
  小倉枡の1升は京枡の0.9641升だから
    計算式は
      小倉枡の物成×0.9641
2.京枡物成(賦課税込み)を小倉枡の物成に換算する方法
  京枡物成1.30733升は小倉枡の1.26040268升だから
    計算式は
      京枡物成×1.26040268÷1.30733
              「郡典私志」P.18より作成

 
 小倉枡の一石は京枡では九斗六升四合一勺であるから、小倉枡から京枡への換算は、〇・九六四一を掛ければよい。京枡物成を小倉枡の物成に換算する場合は、京枡物成の高に一・二六〇四〇二六八を掛けて一・三〇七三三で割ればよい。なお、一・二六〇四〇二六八という数値は、例2に示すように、付加税を加算した京枡物成高の、村高に対する倍率である。また、付加税は三斗七合三勺二才八弗余であるが、計算の便宜上二弗を加えて三斗七合三勺三才にしたという。この計算例で付加税を加算した物成高を掲げているのは、村方にとっては、付加税を加算した現実の上納高こそが問題であったからであろう。
 そこで、〇・九六四一、一・二六〇四〇二六八、一・三〇七三三という係数、除数を覚えていれば、計算は簡単であった。とくに一・二六〇四〇二六八については「十二六下四下二六八」と覚えた(郡典)。「下」は一桁下がる、ゼロという意味であろう。ただし、これは帳簿上の操作に必要な数字であるから、一般の百姓にはほとんど縁がない数値であったと考えられる。