夏越の祭りには大橋の九町から山車や舁き山が、また宮市村からは舁き山が出た。次の史料は文政一一年(一八二八)大橋村の山車・舁き山の巡行道順である。少し長いが引用してみよう。
大橋村神祭山車順道執行の次第書付 |
一、車 金剛丸 |
但、鐘・太鼓にて囃子仕り候 |
一、同 大道 |
但、右同断 |
一、同 新町 |
但、太鼓・手拍子・笛にて囃子仕り候 |
一、同 下正路 |
但、鐘・太鼓にて囃子仕り候 |
一、同 川越 |
但、右同断 |
一、山 横町 |
但、右同断 |
一、車 東町 |
但、三味線、鼓弓・太鼓・摺鉦・短キ小歌にて囃子、尤も町三町は前後の儀は年々鬮(くじ)取り仕り候 |
一、同 中町 |
但、右同断 |
一、同 西町 |
但、右同断 |
一、同 小辺野 |
但、太鼓・手拍子・笛にて囃子仕り候 |
〆 |
右の通り相調べ書付差し上げ申し候、以上 |
子六月 大橋町庄屋 伝蔵 |
大橋村庄屋 太四郎 |
(国作手永大庄屋文政一一年日記六月一一日条) |
東町・中町・西町の山車に付く「鼓弓」とは、「胡弓」のことであろうか。胡弓を使った囃子と言えば、富山県八尾町で行われる「おわら風の盆」を思いだす。かつて、大橋村の夏越の祭りでは、幻想的な胡弓の弦声が、町に、田の面に鳴り響いていたのであろうか。現在の喧騒からは想像もつかない情景である。