在郷町

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 まず初めに「在郷町」について、『日本史用語大辞典 用語編』(柏書房)の解説を紹介しておく。
 
 郷町・町分・町場・在町・町村・町屋ともいう。江戸時代、農村における小都市集落のこと。領主支配の面では町方に対して在方として農村に編入されたが、町方に準ずる扱いを受けることが多かった。本百姓が中心メンバーとなり、地域の商品流通の中核をなすとともに、遠隔地商業の中心地としての機能をも果たすようになった。

 
 すなわち、村の中に建設された商業地域(町場)ということである。
 さて行橋市歴史資料館には、幕末期に描かれた「大橋村 行事村 宮市村見取図」が保存されている。この絵図には行橋市街のうち、長峡川(行事川)沿岸域に、「御蔵所」や「御郡屋」・「御茶屋」などの藩施設のほか、大庄屋の詰所である「手永宿」や役所兼住居の「役宅」が見える。また道路際には、小倉藩有数の豪商として知られる「玉江彦右衛門」・「堤半兵衛」・「柏木勘八郎」宅をはじめ、民家が密集しており、農村というより、町場の様相が著しい。同絵図による町場の検証は、第四章第三節にゆずり、以下当地方を通過した旅人の旅行記から、町場の記述を拾っておく。