飴屋札については、現存する札から発行時期が三期にわたることが分かる(口絵写真参照)。第一次発行のものには発行年がないが、二次の札の裏面には「天保六年乙未秋改」とあり、「京都郡限通用」と通用範囲を限定する文言も刷り込まれている。二次の札は、一次札の書体や形式を踏襲しているが、三次札は全く様式が異なっている。これは大坂心斎橋近くに店を構える西海堂美濃屋清助が版木を拵えたもののようである。また飴屋札の特徴としては、他の商家の札の額面が銭で表示されているのに対して、銀高表示になっていることである。伝存する飴屋札から発行額面の種類を見ると、最高額一〇目で、以下五匁・一匁・五分・三分・二分となる。これは藩札の額面と競合しており、通用面では藩札を圧倒したことも推測される。なお飴屋における札摺立ての様子は、表16・17のようで、年末から年始にかけ摺られていることが窺える。
表16 天保八年飴屋札摺立一覧 | |||||||
内訳 | 二分札 | 三分札 | 摺札枚数 | 摺札総額 | 備考 | ||
月日 | 摺札 | 悪札 | 摺札 | 悪札 | |||
枚 | 枚 | 枚 | 枚 | 枚 | |||
二、一〇 | 六五 | 四三 | 四七 | 四六 | 一一二 | 二七匁一分 | |
一一 | 五八七 | 一三 | 五八七 | 一一七、四 | |||
一二 | 五六四 | 三六 | 五六四 | 一六九、二 | |||
一三 | 七一六 | 三四 | 七一六 | 一四三、二 | 五〇〇枚出 | ||
一四 | 六三二 | 一八 | 六三二 | 一八九、六 | 五〇〇枚出 | ||
一五 | 四八〇 | 二六 | 四八〇 | 九六、 | |||
一六 | 三九七 | 八 | 三九七 | 一一九、一 | |||
一七 | 二八三 | 一二 | 二八三 | 五六、六 | |||
一八 | |||||||
一九 | 三九二 | 八 | 三九二 | 一一七、六 | |||
二〇 | |||||||
二一 | |||||||
二二 | |||||||
二三 | 五八四 | 一六 | 五八四 | 一一六、八 | |||
二四 | 七八〇 | 二〇 | 七八〇 | 二三四、 | 五〇〇枚出 | ||
二五 | 六九一 | 九 | 六九一 | 一三八、二 | |||
二六 | 六七一 | 二九 | 六七一 | 二〇一、三 | |||
二七 | 五八九 | 一一 | 五八九 | 一一七、八 | |||
二八 | 五八三 | 一七 | 五八三 | 一七四、九 | |||
二九 | |||||||
三、 一 | 四八七 | 一三 | 四八七 | 九七、四 | |||
二 | 五八七 | 一三 | 五八七 | 一七六、一 | |||
三 | 三九二 | 八 | 三九二 | 七八、四 | |||
四 | |||||||
五 | 五八五 | 一五 | 五八五 | 一七五、五 | |||
六 | |||||||
七 | 四八四 | 一六 | 四八四 | 九六、八 | |||
八 | 三五五 | 二 | 三五五 | 一〇六、五 | |||
小計 | 五、三五八枚 | 二〇一枚 | 五、五九三枚 | 二一二枚 | 一〇、九五一枚 | (七四九) | |
二貫七五三匁五分 | |||||||
一二、一四 | 一八四 | 一六 | 一八四 | 三六、八 | |||
一五 | 三九二 | 八 | 三九二 | 一一七、六 | |||
一六 | 三九六 | 四 | 九二 | 八 | 四八八 | 一〇六、八 | |
一七 | |||||||
一八 | 二三三 | 一七 | 二三三 | 四六、六 | |||
一九 | |||||||
二〇 | |||||||
二一 | 一四七 | 三 | 一四七 | 四四、一 | |||
二二 | |||||||
二三 | 一九八 | 二 | 一九八 | 三九、六 | |||
小計 | 一、〇一一枚 | 三九枚 | 六三一枚 | 一九枚 | 一、六四二枚 | 三九一匁五分 | |
総計 | 六、三六九枚 | 二四〇枚 | 六、二二四枚 | 二三一枚 | 一二、五九三枚 | (一四一) | |
三貫一四五匁 | |||||||
「天保八酉二月 札元紙控」(玉江文書88) |
表17 天保九年飴屋札摺立一覧 | 単位:枚 | |||||
内訳 | 五匁札 | 一匁札 | ||||
月日 | 摺札 | 悪札 | 正味摺札 | 摺札 | 悪札 | 正味摺札 |
一一月二〇日 | 二〇〇 | 二〇〇 | ||||
二一 | 四〇〇 | 七 | 三九三 | |||
二二 | 三〇〇 | 一二 | 二八八 | |||
二三 | 四〇〇 | 一二 | 三八八 | |||
二四 | 三〇〇 | 一一 | 二八九 | |||
二五 | 三〇〇 | 一三 | 二八七 | |||
二六 | 四〇〇 | 七 | 三九三 | |||
二七 | 三〇〇 | 二二 | 二七八 | |||
二八 | 四〇〇 | 一八 | 三八二 | |||
二九 | 五〇〇 | 六 | 四九四 | |||
一二月 朔日 | 五〇〇 | 一七 | 四八三 | |||
二 | 四〇〇 | 五 | 三九五 | |||
三 | 五〇〇 | 一三 | 四八七 | |||
四 | 二〇〇 | 二 | 一九八 | |||
五 | 四〇〇 | 二 | 三九八 | |||
六 | 四〇〇 | 一五 | 三八五 | |||
七 | 四〇〇 | 六 | 三九四 | |||
八 | 三〇〇 | 一三 | 二八七 | |||
九 | 三〇〇 | 九 | 二九一 | |||
一〇 | 三〇〇 | 二 | 二九八 | |||
一一 | 三〇〇 | 八 | 二九二 | |||
一二 | 三〇〇 | 三 | 二九七 | |||
一三 | 三〇〇 | 四 | 二九六 | |||
一四 | 三〇〇 | 一二 | 二八八 | |||
一五 | 三〇〇 | 五 | 二九五 | |||
一六 | 四〇〇 | 三 | 三九七 | |||
一七 | 四〇〇 | 一六 | 三八四 | |||
一八 | 四〇〇 | 五 | 三九五 | |||
一九 | 四〇〇 | 五 | 三九五 | |||
二〇 | 三〇〇 | 三 | 二九七 | |||
二一 | 一五〇 | 一 | 一四九 | |||
二二 | 四五〇 | 三 | 四四七 | |||
二三 | 五〇〇 | 八 | 四九二 | |||
二四 | 三〇〇 | 五 | 二九五 | |||
二五 | 二〇〇 | 五 | 一九五 | |||
二六 | 八〇〇 | 一七 | 七八三 | |||
二七 | 一〇〇 | 一〇〇 | 二〇〇 | 五 | 一九五 | |
合計 | 一〇、二五〇 | 二五〇 | 一〇、〇〇〇 | 三、〇五〇 | 五〇 | 三、〇〇〇 |
「札場一切控」(玉江文書85) |
柏屋と新屋については、両家共同で発行した札と柏屋単独で発行した札がある(口絵写真参照)。両札を比較すると、版木本体は同一のものを使用し、屋号部分のみ別刷りにしたもののようである。発行年は天保一四年(一八四三)一〇月「吉祥日」で、現在判明している札額面は銭三〇〇文・二〇〇文・三〇文の三種類である。