当時藩士は、田川郡や仲津郡、築城郡の各農家に仮住まいであったので、香春思永館は次のように支館を設け、責任者の助教と句読師を発令した。
支館箇所割 | |||
上赤村 | 照福寺 | 助教 | 山田謙次郎 |
句読師 | 鎌田英三郎 | ||
田原村 | 蓮則寺 | 助教 | 大輪熊太郎 |
句読師 | 風間郷左衛門 | ||
大村 | 瑞龍寺 | 助教 | 寉嶋八兵衛 |
句読師 | 下村虎之助 | ||
城井村 | 即伝寺 | 助教 | 布施済右衛門 |
句読師 | 馬場久左衛門 | ||
別府村 | 助教 | 嶋田平太郎 | |
句読師 | 吉川種次郎 |
学業は当初、句読と習書に限られていたが、やがて神社を利用し剣術の稽古を再開した。しかし、それも束の間、維新政府は兵二〇〇名を登京させるよう求めてきた。そのため、上赤支館の鎌田英三郎、大村支館の下村虎之助、伝法寺支館の白石崎右衛門など、多くの藩士が平井小左衛門の率いる平井隊に属して京都へ向かった。そのため、各支館の助教・句読師・習書師をはじめ剣術・槍術師範の面々にも異動が発令された。各支館について教職の人々を紹介する。
上赤支館 | 助教・句読師 | 山田謙次郎 |
句読師 | 川崎宗吉 | |
〃 | 丹村匡彦 | |
句読師助 | 平松栄蔵 | |
〃 | 沢渡専右衛門 | |
習書師 | 岩垂小左衛門 | |
〃 | 森島摩茂留 | |
物書 | 富久清兵衛 | |
田原支館 | 助教・句読師 | 風間郷左衛門 |
句読師助 | 村岡松太郎 | |
〃 | 勝野貫太郎 | |
習書師 | 稲垣宗十郎 | |
物書 | 木下林兵衛 | |
大村支館 | 助教・句読師 | 志津野庄太郎 |
句読師 | 外山友之輔 | |
習書師 | 香野専蔵 | |
物書 | 平田喜左衛門 | |
城井支館 | 助教・句読師 | 芝尾新五郎 |
〃 加勢 | 進定之丞 | |
句読師 | 馬場久太郎 | |
習書師 | 緒方丈左衛門 | |
剣道師範 | 青柳幸四郎 | |
物書 | 平田繁太郎 | |
伝法寺支館 | 助教・句読師 | 嶋田平太郎 |
句読師 | 神吉常太郎 | |
句読師助 | 平岡虎之助 | |
習書師 | 内山与右衛門 | |
物書 | 石川武左衛門 | |
弁城支館 | 助教・句読師 | 浦野順之丞 |
句読師 | 白川与一郎 |
支館では、従来の士分格以上の藩士子弟に限らず、卒・下卒の子弟も入校が許された。従前の家塾や寺小屋的な教育が困難であったことに起因していた。なお、香春思永館の教育は、避難先での限られた学業であり、評価は学館を継続したことに意義を見出すものである。