香春思永館の開業

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 慶応三年四月二〇日、香春藩は香春の光願寺を仮学館として、思永館の開業を触れ出した。
 当時藩士は、田川郡や仲津郡、築城郡の各農家に仮住まいであったので、香春思永館は次のように支館を設け、責任者の助教と句読師を発令した。
 
    支館箇所割
  上赤村照福寺助教山田謙次郎
句読師鎌田英三郎
  田原村蓮則寺助教大輪熊太郎
句読師風間郷左衛門
  大村瑞龍寺助教寉嶋八兵衛
句読師下村虎之助
  城井村即伝寺助教布施済右衛門
句読師馬場久左衛門
  別府村助教嶋田平太郎
句読師吉川種次郎

 
 学業は当初、句読と習書に限られていたが、やがて神社を利用し剣術の稽古を再開した。しかし、それも束の間、維新政府は兵二〇〇名を登京させるよう求めてきた。そのため、上赤支館の鎌田英三郎、大村支館の下村虎之助、伝法寺支館の白石崎右衛門など、多くの藩士が平井小左衛門の率いる平井隊に属して京都へ向かった。そのため、各支館の助教・句読師・習書師をはじめ剣術・槍術師範の面々にも異動が発令された。各支館について教職の人々を紹介する。
 
上赤支館助教・句読師山田謙次郎
句読師川崎宗吉
 〃丹村匡彦
句読師助平松栄蔵
 〃沢渡専右衛門
習書師岩垂小左衛門
 〃森島摩茂留
物書富久清兵衛
田原支館助教・句読師風間郷左衛門
句読師助村岡松太郎
 〃勝野貫太郎
習書師稲垣宗十郎
物書木下林兵衛
大村支館助教・句読師志津野庄太郎
句読師外山友之輔
習書師香野専蔵
物書平田喜左衛門
城井支館助教・句読師芝尾新五郎
 〃 加勢進定之丞
句読師馬場久太郎
習書師緒方丈左衛門
剣道師範青柳幸四郎
物書平田繁太郎
伝法寺支館助教・句読師嶋田平太郎
句読師神吉常太郎
句読師助平岡虎之助
習書師内山与右衛門
物書石川武左衛門
弁城支館助教・句読師浦野順之丞
句読師白川与一郎

 
 支館では、従来の士分格以上の藩士子弟に限らず、卒・下卒の子弟も入校が許された。従前の家塾や寺小屋的な教育が困難であったことに起因していた。なお、香春思永館の教育は、避難先での限られた学業であり、評価は学館を継続したことに意義を見出すものである。