行橋市内に現存する歴史的建造物については、福岡県教育委員会が昭和四一年度に実施した緊急民家調査において上稗田の村上家と沓尾の守田家、昭和五八年度に実施した緊急近世社寺建築調査において今井の浄喜寺本堂が取り上げられ、他に行橋市有形文化財に指定された飴屋門についても調査が行われているが、これら四棟を除いて建造物調査は全く行われていない。
そこで、行橋市内に現存する寺院・神社建築、民家建築、洋風建築のうち、代表的な建築物を選んで建造物調査を行った。ただし、歴史的建造物の残存状況は芳しくなく、建築年代が江戸期に遡るものは、神社建築が六件九棟、寺院建築が三件六棟、民家建築が四件四棟に留まった。
これらに行橋市有形文化財(現在は福岡県有形文化財)に指定された洋風建築の旧百三十銀行行橋支店を加え、さらに寺院建築は明治前期、民家建築は明治・大正期まで調査対象を広げて建造物調査を実施し、多岐にわたる行橋市の歴史的建造物の特色を把握するよう努めた。本章ではこれらの建造物調査の結果を報告することとする。なお、浄喜寺本堂、飴屋門については前述の調査報告を参照した。
これら建築物の調査は、平成一四年三月一三日から一五日、同年五月二三日から二四日、平成一六年一二月一七日に実施したが、村上家については取り壊し直前、平成一三年六月一三日に実施した。調査には九州芸術工科大学大学院学生日隈康喜、上谷孝介、松尾篤、同大学学部学生小谷彩華、土岐明子、麻生美希、谷口顕、奈良文子、橋口創史、九州大学大学院芸術工学府学生成田聖、山口県立大学生活科学部助手伊藤則子が参加した。
調査内容は来歴の聴聞、現状平面図・現状断面図の採取・実測、配置図・痕跡図・構造形式の採取、写真撮影から成るが、寺社建築については庫裏を除いて現状断面図と痕跡図の採取は割愛した。このうち民家建築については痕跡図に基づく復原平面図と現状断面図、寺社建築については現状平面図を浄書し、外観と内部の写真とともに掲載した。