小作地率と農民の構成

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 前掲表5で見たように、京都郡の小作地率は県内他地域に比べて非常に高かった。大正期には漸減するが、昭和五年になっても五八%に達しており、昭和二〇年まで高い比率を維持するのである。
 大正・昭和期の京都郡の農民の構成を所有規模別と自小作別に見てみよう。表20の耕地所有規模別の推移を見ると、昭和一五年になっても五反未満層が四二%占める一方で、五町以上層が強固に存在していることがわかる。表21の自小作の構成によれば、大正初期から小作がかなり減少し、その構成比は大正四年の四四%から昭和一五年には三三%に低下した。一方で、自作農も大正末期には増加したが、昭和前期には微減している。これに反して自小作層が大きく伸張し、大正四年の三一%から昭和一〇年には四五%になっている。これはかつての小作層が多少なりとも自作地を取得し、自小作に上昇していった結果と読み取ることができよう。小作地率の漸減はこうした傾向を示しているわけであるが、小作地率の減少はわずかであることから、彼らの自作地が猫の額に等しいものであったことは容易に推測できよう。
 
表20 土地所有規模別戸数の推移(単位:人、%)
年次5反未満5反以上1町以上3町以上5町以上合計
 構成比指数 構成比指数 構成比指数 構成比指数 構成比指数
大正4年3,67149.31001,90225.51001,41719.01002703.61001922.61007,452
大正9年2,99443.4821,87027.0981,55322.51102754.01022103.01096,902
大正14年2,85448.1781,48425.0781,19420.1842233.8831742.9915,929
昭和5年3,05845.4831,83627.2971,38620.6982593.8961993.01046,738
昭和10年3,73149.41021,84624.4971,53020.31082783.71031662.2877,551
昭和15年2,97542.4811,91027.21001,77425.31252012.9741582.3827,018
出典:『福岡県統計書』

表21 京都郡の農業戸数(自小作別)(単位:戸、%)
年次自作 自小作 小作小計 合計
比率比率比率
明治43年1,89521.52,92033.14,01845.58,833
大正4年1,99524.32,56031.23,65344.58,208
大正9年2,06226.32,78635.53,00138.27,849
大正14年2,12526.63,09138.62,78734.88,003
昭和5年2,03525.52,94936.93,00837.67,992
昭和10年1,92924.03,66745.62,45330.58,049
昭和15年1,93525.53,14641.52,50133.07,582
出典:『福岡県統計書』

 しかし、わずかな自作地であったとしても、こうした自小作層は生産意欲旺盛であったに違いない。実際、昭和恐慌期の経済更正運動の現場の中核になったのはこうした階層であったのである。