明治期の漁獲物製造品

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 豊前海における主要な漁獲物製造品として、イカの加工品(塩漬、干物)があげられる。明治一六年に東京で開催された、農商務省主催の第一回水産博覧会に、仲津郡蓑島村の漁業人磯邊岩吉と製造人関多三郎がイカの塩〓(塩干物)・干〓(干物)とブチ(イシモチ)の干〓、シロエビの干〓を出品している。受賞については不明である。さらに、同三〇年に開催された第二回水産博覧会で、京都郡今元村の片山豊盛の「小鰈(かれい)六々煮」と蓑島(磯村保平)ほか京都郡出品分の甲付鯣(こうつきするめ)(カワツキイカともいう、コウイカの干物)が褒状を受けた。甲付鯣は、長崎や神戸を経て主に中国へ輸出された。
 このほかに中国などへ輸出された豊前海の主要製造品として、干海老と摺海老(すりえび)があげられる。郡内では蓑島と沓尾で加工していた。さらに蓑島では、味真(みしん)海老という干海老の粉末加工品も製造しており、国内で広く販売された(写真7)。エビ加工は、明治三〇年以降の中国・四国地方からの打瀬網参入により本格化した。
 
写真7 豊前水産組合が発行した水産物製造業證票
写真7 豊前水産組合が発行した水産物製造業證票(丸谷久夫氏所蔵)

写真7 蓑島丸谷家が製造販売した「味眞海老」のレッテル
写真7 蓑島丸谷家が製造販売した「味眞海老」のレッテル(丸谷久夫氏所蔵)