乗合自動車の始まり

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 わが国のバス事業について、倉島幸雄編著『日本乗合交通編年史』(たいせい、一九九五年)によって簡単に見ておこう。わが国の乗合自動車の歴史は明治三六年に始まる。二月に三重県宇治山田で乗合自動車株式会社が設立され、三月に六人乗蒸気自動車による試運転が行われた。八月に愛知県は我が国最初の「乗合自動車営業取締規則」を制定し、この規則に基づき名古屋自動車株式会社が営業許可を受けた。九月二〇日には京都乗合自動車二井商会が京都で我が国最初の路線バスの運行を開始した。もっとも、これは京都の取締規則制定前であった。フランス人デブネによって自動車が初めてわが国に持ち込まれたのが明治三一年であったから、その五年後のことである。
 東京の取締規則が制定されるのは明治四〇年で、全国で二一番目であった。大正八年になって全国一律の「自動車取締令」が制定され、乗合自動車業(バス)の経営は地方長官の免許制となった。大正中期以降バス事業は全国に普及し、大正一三年の事業者数は三一五一社に上った。もっともその大部分は零細業者であった。