明治二〇年代は、日本鉄道の成功により空前の鉄道敷設ブームが起こった時代である。明治二一年に九州鉄道が設立され、二二年に筑豊興業鉄道に免許状が下付されると、強い刺激を受けて豊州鉄道会社の計画が始まる。
九州の鉄道史に関する研究は、幹線鉄道の九州鉄道や産業鉄道の筑豊興業鉄道に集中している。そのほかでは、唐津興業鉄道や電気軌道についての研究があるが、行橋町に本社を置いた豊州鉄道会社についてのまとまった研究はない。
ただし、正確で簡潔な紹介としては『日本国有鉄道百年史』がある。年表的に整理したものでは『鉄道史』中篇、ならびに行橋を中心としたものとして山内公二「行橋地方鉄道発達年表」(『合本美夜古文化』)がある。また山内「豊州鉄道(行橋-伊田間)の開業」(『美夜古文化』No.30)は、新聞記事史料を紹介している。
これらの史料に拠り、また少し読み難く煩わしいかもしれないが、新しい史料も紹介しながら豊州鉄道の設立と行橋-伊田間の開通を見てみよう。