豊州鉄道の経営

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 豊州鉄道の経営概況を二つの表から見ておこう。計画当初の資本金一五〇万円は、明治二三年の第一回の五〇万円増資をはじめ、計六回の増資を行い、最終的には六八〇万円に達した。二八年以前の増資は、計画の変更や土地買収価格の騰貴、或いは日清戦争の影響による輸入品の騰貴、工場建設費用によるものであったといわれる(『日本国有鉄道百年史』)。二九年以降の増資は前述した線路延長と輸送力増強のための資金を必要としたからであった。
 日清戦争終結後の二八年下半期には、株式市場は活況を示し、戦後の企業勃興時代を出現させたといわれる。この企業勃興は、鉄道事業を中心に石炭鉱業にも及んだ。こうした経済背景の中で豊州鉄道は増資し、払い込みも順調に行われた。しかし三〇年末から三一年にかけて紡績業を中心に不況に陥った。それにもかかわらず豊州鉄道は好況期の計画を実現し、線路を急速に延長し、輸送力を増強する積極経営を続けた。
 その結果、開業線路と機関車、貨車、客車は表7のように増大した。二八年から三三年までのわずか六年の間に、機関車は五倍、貨車は三・三倍、客車は三・七倍になった。客車の増加率のほうが貨車のそれより大であるが、豊州鉄道はあくまでも石炭輸送を主とする産業鉄道であった。
 
表7 資本金と開業線路・機関車および貨車・客車数
(単位:千円、マイル・チェイン、台)
 資本金積立金借入金開業線路建設費機関車貨車客車
総額払込額
明治283,0002,000641018 301,501418014
  293,0003,0003952018 301,592820517
  305,0004,38910615048 343,8101236532
  316,8005,70117626050 104,2531643547
  326,8006,080226 52 754,9402059551
  336,8006,080237 52 755,2002066752
出典:『日本国有鉄道百年史』第4巻、原数字は『鉄道局年報』明治38年度
注:1マイル=約1.6km、1チェイン=約20.1m

 豊州鉄道が石炭輸送鉄道であったことは、貨車車両の数が圧倒的に多数であることから明らかであるだけではない。貨物収入が全収入に占める割合は、表8のとおり、開業初年度を除けば常に六〇%以上であり、明治二九年には七五・九%、三三年には七一・九%に達している。貨物収入、とりわけ石炭輸送への依存度があまりにも高かったことが豊州鉄道の運命を変える。
 
表8 経営状況
 取扱数量収入営業費(円)差引(円)
旅客(人)貨物(トン)旅客(円)貨物(円)雑収入(円)計(円)
明治28118,28883,65912,60036,11757,057105,77435,05670,718
  29285,769428,44831,571133,15710,722175,45079,44696,004
  30923,355630,109122,523227,60016,204366,327177,254189,073
  311,298,007860,314202,338399,46631,138632,942258,415374,527
  321,299,627838,087216,225463,99539,521719,741276,593443,148
  331,343,6931,230,997219,037650,15134,985904,173368,799535,374
出典:『日本国有鉄道百年史』第4巻
注:原史料は『鉄道局年報』明治38年度