独立系水平社・自治正義団の創立

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 京都郡を拠点とした独立系水平社・自治正義団は、全国水平社(全水)に遅れること四年、大正一五年五月一一日に創立された(小正路淑泰「自治正義団史論-ある自主的融和団体の軌跡-」『部落解放史・ふくおか』66、写真4参照)。行橋町の京都郡公会堂で開催された創立大会では、吉川兼光が初代理事長に選出され、以下の「宣言」、「綱領」が採択された。
 
宣言
地球は公正である
人類は今、自己の社会に存在する不正義を匡正すべき、
大試練の中に置かれてゐる
改造か、革命か
耳を傾けよ! 解放の叫び、破壊の声が、地球の隅々から、物凄く聞へて来るではないか
そして次々と勝利の鐘は鳴り出してゐる
不正義を糾明する者の頭上には、恒に天帝の加護があるのだ
人類の多数が若し、此の不正義を匡正することを怠れば、
その到達すべき最後の運命は明らかである
国家の隆盛、社会の繁栄、悉くこの不正義を除去して後、
始めて実現すべき可能を有する
同胞差別と云ふ不正義をもつ日本よ、醒めよ、そして静かに祈れ
差別観念の根絶を目標として、正義を闡明し、不正義を糺弾し、地上に人類共存共栄の新社会を建設すべく、自治正義団は生れ出たのである
正義団の使命は、日本の念願であり、人類最高の完成である
地球は公正である

綱領
一、明治天皇御聖旨の徹底を期す
一、人類生活に対する真正を把握する
一、賤視観念に依る社会悪の根絶を期す
一、行動は公明を期す

 
 創立大会の演説会では、自治正義団同人四名、福岡県社会課・真鍋博愛(のち福岡県親善会主事)、京都郡選出県議・筒井省吾(民政党)が演説した(出口養蔵(ママ)「創立大会記」、吉川兼光編『地殻を破つて』)。
 自治正義団は、「明治天皇御聖旨」(綱領)=「解放令」や「天帝の加護」(宣言)に依拠しながら、「人類共存共栄の新社会」(同)と「人類最高の完成」(同)をめざした。差別行為・言辞こそが「不正義」(同)、すなわち正当な社会秩序からの逸脱であるという主張は、初期水平社と共通している。自治正義団は、水平運動とともに、中央融和事業協会の強力な後押しで発足した官製融和団体・福岡県親善会(昭和三年九月結成)とも連携するという柔軟な対応を行っていった。
 
写真4 自治正義団の同人たち(昭和3年)
写真4 自治正義団の同人たち(昭和3年)