昭和八年九月一二日、全農福岡県連委員長田原春次と日農九同豊前連合会長有永霊城は、全水九連代表松本治一郎、全農福佐福岡地区代表岩田重蔵との四者連名で、「九州地方農民団体会議の提唱」を発表して農民戦線統一を訴えた。九月二五日、九州地方農民団体懇談会(福岡市松園公会堂)が開催され、田原は、そこで、「本会議を提唱した動機の一つは高松裁判所問題」であり、「差別問題に就て支配階級に対して戦線を統一せよ」と提起した。つまり、田原は高松結婚差別裁判を「ナチスのユダヤ民族圧迫」と同様の「支配階級」によるマイノリティに対する抑圧、すなわち「ファシズムの露骨な現われ」と危機感を強め、「支配階級」に鋭く対峙するために農民戦線統一を提唱したのであった(同前)。