惨な差別事件が、築上郡下城井村(現築城町)で発生した。被害者遺族は、「全水京築支部組織準備委員長木本新太郎(ママ)を通じて全水福連の応援を求め」、「八月一六日代議士田原春次、全水福連本部常任藤原権太郎、全水京築支部主事牧野渡」が糺弾方針を協議し、「差当り本問題は地元に於て取扱い、福連本部は当分静観的態度をとることに決定」した(前掲『部落問題・水平運動資料集成』3)。
地元部落大衆は、「福連本部の態度を軟弱なりと非難」して、「一、我等同志の通学児童を停学さす。一、青年会、国防婦人会、消防組、其他の団体を離立す」という決議を福岡県知事、下城井村長、下城井小学校長、全水中央委員長松本治一郎に郵送するなど態度を硬化させた(同前)。八月二九日、下城井村は村議協議会を開催し、信用組合長に調停を依頼した。部落側は「将来不祥事件の再発防止に関する村当局の保証書一札を徴すること」などを強硬に主張したが、最終的には調停者に白紙一任することになった(同前)。
木本新次郎を中心とする日中戦争期の全水京築支部組織準備委員会は、「組織準備委員会」に止まり、京築地方においては最後まで正式な全水系の組織は確立されなかった。全国水平社は、言論出版集会結社等臨時取締法のもと、昭和一七年一月二〇日、自然消滅した。