九州農民学校は、昭和一三年五月一六~一九日、豊前農民会館で開催された。参加者五五名。開講科目と担当講師は次のとおりである(「九州労働新聞」昭和一三年六月一日)。
二宮尊徳論・最近の国内状勢(田原春次)、農地調整法解説・米穀検査改正運動(前川正一)、町村財政の解剖(織本侃)
参加者には拓務省寄贈の移民地図・小冊子や社団法人金鶏学院(安岡正篤創立)寄贈の菅原兵治『晴耕雨読読本』(金鶏学院、昭和四年)が配布された(同前)。九州農民学校の入学聴講案内「農民は農民学校へ」(法政大学大原社会問題研究所所蔵)で予告された田原の講義内容は、「満洲、支那、南洋、南米移民地実情、社会大衆党の革新的農村政策解説、『言志録』『日本精神通義』大要解説」であった。
ここにいたって、堺利彦農民労働学校の設立趣旨は完全に変質し、であるからこそ、校名も九州農民学校へと改称されたのである。