戦争が長期化し、それに伴い膨大な戦費が必要になると、政府は国民に倹約生活を強いるようになる。昭和一五年三月、福岡県は国民生活を制約する「国民総動員、銃後生活刷新実際第一輯」を発行した。これは「生活の刷新」という美名のもとに、庶民の生活を抑圧して、その残りを国民貯蓄に回し、武器、弾薬を増産して、何とか戦局の挽回をはかろうとしたものである。
この冊子の結びに、「戦時下に於ける刻々と急迫を告げつつある我が国経済状態に鑑み、之が打解(ママ)の一部面として銃後国民の生活刷新、特に結婚葬儀の改善に関する実例をあげたのである」とあるように、国民を国の方針に都合のよい生活例を挙げて、それに国民を倣わせようとしたのである。