生徒心得と教師心得書

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 明治八年(一八七五)七月、小倉県は生活指導やしつけを重視した「小学心得」を布達した。その第一条には、
 
朝早ク起キ 顔ト手ヲ洗ヒ 口ヲ漱ギ髪ヲ掻キ 父母ニ礼ヲ述ヘ 朝食終レハ学校ヘ出ル用意ヲナシ 先ツ筆・紙・書物ヲ取揃ヘ置キテ取落シナキ様致スヘシ、但出ル時ト帰リタル時ニハ必ス父母ヘ挨拶ヲ為ス可シ

 
と、家庭における生活の基本を厳しく示している。
 そのほか、毎日始業一〇分前には登校すること、席に着くときには教師に礼をすること、授業中は教師の教えをよく聞き、よそ見や雑談などをしないこと、授業の合図があれば直ちに自席に着き、教師の合図を待つこと、教師の教えには一切文句をいわずわがままをいわないこと、先生や友人に会った時にはきちんと挨拶をすることなど、学校での生活習慣やしつけが事細かに記されている。
 同時に「小学教師心得書」も布達し、教師としての心得を次のように述べている。その第一条には、「およそ教師たるもの文筆算を教えるだけではない。父母の教訓を助けて飲食起居に至るまで心を用いて教えるべきである。」と、また第三条には、「幼い時は子供はすべて教師の言動を見て、何事も善いものだと受け止めてしまうので、授業時間外といえども不善の行いをしてはならない……。」などと、教師の品格についても厳しく諭している。