読み下し

近藤勇書簡

原本画像を見る

目録を見る目録を見る

其御地愈(いよいよ)御勇健珍賀奉り候
然らば毎度御尊書
御尋ねに預かり誠に委敷(くわしく)
御書き取り送り下され且つ下拙
始め一統慎静致すべく旨
御教諭仰せ越され有りがたく承知
罷り在り候 七月以後堅く
相慎み居り候 都て(すべて)先頃
平野次郎御所焼き払い
方一味は三条木屋町
屯致し居り縄手夜討ち
後 局中え間者三人
同志致し居り如何致すべくと
久々心配仕り候 拠んどころ無く殺
害致し申し候 下拙義も大坂
罷り越し滞留中間者
のため一夜相忍び申す事
御座候 彼是一夜安心
致す事御座無く候 兎角
御用多く会津公役所
亦は御所、町奉公(行カ)等え
日々御用に付罷り出
寸暇これ無く素々不学
短才下拙ゆへ此のごとくの義
は決して預かり申すべくの筈には
御座無く候得共、万端事
一人掛り候ゆへ甚だ心配
仕り居り実に御尊兄別宅
おいて酒肴時々思い出し
候えば東下一刻も
急度(きっと)存じ奉り候えども亦
国家大義も相弁(わきま)え候
へば右様にも相成らず愚拙
心中御賢察伏して希い奉り候
老父病気如何御座候哉
彼是御配慮の事存じ奉り候
随って拙宅留守中は
御厚情相成り其上稽古
場家根の是亦有りがたく
存じ奉り候 門葉御取り立て
の義別て有りがたく仕合
存じ奉り候 京師においても
文武館相建て申し候
いつれ東下の義来陽
にも相成るべくと存じ奉り候間
其内は然るべき様御世話
希い奉り候 土方氏も
無事罷り在り候 殊に刀は
和泉守兼定二尺八寸
脇差壱尺九寸五分堀川
国廣扨(さて)脇差長き
程宜しく御座候 下拙義も
当時脇差二尺三寸壱分
御座候 露地場至り候ては
必定刀相損じ申すべく候万一
折れ申し候節には長き小に限り
申すべく候 将に荒木又右衛門
は桜井切掛け候節刀折れ
其節脇差二尺二寸五分
これあり候ゆへ尤も脇差の働きと
存じ奉り候 折申し候刀は伊
    (消し)
賀守金道三尺二尺八寸五分
これあり候 先頃荒木家にて
一覧仕り候 殊の外美事
の品御座候えども右の様
の事御座候間 必ず小は
長きに限り申すべく候 扨又
金弐拾両差し送り申し候
間去る二月借用分
家根替え分御請け取り置き
下され 尚亦老父
家族共差し支かえこれあり候
節 何分宜敷希い奉り候
撃剣御取り立ての義
是亦宜しく願い上げ候 枝ながら
井上氏、小嶋氏、橋本氏
門葉一統えも呉れ々
も宜しく願い奉り候 以上
末筆ながら御嫡子
源之助様始め皆々様
尚亦宜しく希い奉り候 以上
 
 十月廿日    近藤勇
 
 佐藤 彦五郎様
 尚々時候折角御厭い成られ候様
存じ奉り候 枝ながら粕谷兄えも
宜しく京都は殊の外寒気
強く御座候 其御地如何御座候哉
 

 
佐藤君         近藤