おわりに

以上、江戸初期の松江藩主周辺の和歌事蹟を明らかにする上で重要な資料と思われる『山下水』に関する紹介を行った。これまで松江藩に関しては多様な文化的事蹟を残した第七代藩主松平治郷(不昧)に関心が集まることが多く、それ以外の人物・事蹟に関する研究はあまり進んでいない。こうした中で、今回の稽古有文館本が第二代藩主綱隆側室養法院の真筆資料であることは注目に値しよう。
今後は、前節に示した構成をとる綱隆の編纂意図の考察、『古今和歌集』伝本や諸注釈書、古今伝授資料との比較を行う必要がある。さらに、その他の綱隆や養法院の和歌事蹟の検討を進めていきたい。