拝島大師は、寛和元年(985)正月三日に入寂[注1]した慈恵大師[注2]を本尊とするため、「元三大師」ともいわれます。本尊は自作で、もとは比叡山延暦寺の寺宝でした。元亀2年(1571)、織田信長の叡山焼打ちの際に搬出され、7年後の天正6年(1578)、当地に一堂を建立し、安置されたと伝えられています。
80年に一度、開帳される本尊は、高さ約70㎝の木坐像。平成3年(1991)に建て替えられた新本堂に安置されています。
毎年正月二日・三日の拝島大師縁日は「だるま市」として古くから有名で、厄除け・家内安全を願う人々が初詣を兼ねて参拝に訪れます。
だるま市は、もともとは蚕の守り神、あるいは幕末に流行った疫病にだるまが効くという俗信から盛んになったといわれます。
戦前のだるま市では、拝島の渡しを使った人や、臨時列車を運行した旧五日市鉄道南拝島駅から大勢の参拝客が押し寄せました。なお、平成28年(2016)から拝島駅、昭島駅からの臨時バスが復活しました。
[注1] 入寂(にゅうじゃく) …… 寂滅にはいること。特に高僧が死ぬこと。
[注2] 慈恵大師(じえだいし) …… 良源上人(912-985)。第18代天台座主(天台宗の最高の位)。天台宗中興の祖。