文教大学/文教大学ミュージアム

花咲爺絵巻
(文教大学付属図書館所蔵)

『花咲爺絵巻』について

文学部日本語日本文学科 日沖 敦子

日本五大昔話の一つとされる「花咲爺」は、正直爺が福を授かり、欲張り爺がまねして失敗するという、いわゆる隣の爺型の構成で、犬の霊力を核とした話です。「花咲爺」の研究は、大きく二つの方向から深められてきました。一つは、「花咲爺」の起源について考察するもの、そしてもう一つは、江戸時代の出版物と口承文芸の関係です。話の起源については未詳ですが、江戸時代初期の赤小本『めいよの翁(かれきに花さくぢゝひおきな)』を嚆矢とし、赤本に『枯木花さかせ親仁』(東洋文庫内岩崎文庫蔵)など数種の存在が知られています。口承文芸として伝来する「花咲爺」譚の報告は数多くあり、江戸時代の出版物の影響を強く受けて成立したとの見方がなされています。ここに紹介する『花咲爺絵巻』は、比較的珍しい絵巻です。従来、絵巻の形態で伝来する「花咲爺」は、早稲田大学図書館が所蔵する『花咲爺絵巻』(以下早稲田本)が知られるのみでした。本学の絵巻と早稲田本は極めて類似性の高い絵巻で、早稲田本に記されている彩色や下絵の指示書を見ると、本学の絵巻の挿絵に合致する例が見られ、絵巻の制作について考える上でも示唆に富む絵巻です。また、本絵巻には詞書があり、元箱も現存し、その箱書から伝来経緯の詳細が確認できる点でも貴重です。

花咲爺絵巻

『花咲爺絵巻』(題簽「守景粉本昔話の絵」)
作者未詳、伝久隅守景画、江戸時代

挿絵の解説

長さ10メートルに及ぶこの絵巻には、全部で15の挿絵が収められています。ここでは、学生オススメの場面を取り上げた「見どころコラム」を添えて、全体を紹介します。

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    拡大して見ることができます。また、絵巻と翻刻を重ねて表示できます。

  • 「本文を読む」

    該当箇所の翻刻を読むことができます。

  • 「見どころコラム」

    日本語日本文学科の学生が注目する見どころをまとめています。

第1図

第1図

六十路余りの正直者で心優しい夫婦が、貧しいながらも一匹の白犬をかわいがり育てている場面。

第2図

第2図

正直爺が、犬の導きで小金の入った壺を掘りおこす場面。

第3図

第3図

小金の壺の話を聞いた慳貪爺は羨ましく思い、犬を借りてあやかりたいと思う場面。
※慳貪(けんどん):けちで欲が深く、無慈悲なこと。また、そのさま。

第4図

第4図

慳貪爺が古き椀、わらじの類、犬猫の白骨などを掘り出す場面。

第5図

第5図

慳貪爺が犬を見つけ出して打ち殺す場面。

第6図

第6図

正直爺が犬の埋められた所に小松を植える場面。

第7図

第7図

正直爺が杣人に頼んで大木となった松の木が切り倒される場面。

第8図

第8図

切り倒された松の木で臼をつくる場面。

第9図

第9図

正直爺が臼で米や麦をつくと倍増し、さらに中から小金が出てくる場面。

第10図

第10図

慳貪爺が臼を借りて米や麦をつくと中身は半減し、宝も出てこない場面。

第11図

第11図

慳貪爺が腹を立て、臼を打ち砕いて捨ててしまう場面。

第12図

第12図

慳貪爺が臼を捨てたことを知った正直爺が、臼の欠片を集めて持ち帰って焼く場面。

第13図

第13図

正直爺が臼を焼いてできた灰を集め、枯木に振りかけると花が咲き、実を結ぶ場面。

第14図

第14図

正直爺の行いが領主の耳に入り、領主らの前で枯木に灰をかけると、忽ち花が咲き、実を結ぶ場面。

第15図

第15図

領主からたくさんの金子を受け取り、栄える場面。

制作の背景

箱書き画像

この『花咲爺絵巻』は、どのような人によって記され、描かれたのでしょうか。
この点について考える手がかりとなるのが、上箱蓋の墨書です。

参考文献

  • 日沖敦子
    「文教大学文学部日本語日本文学科所蔵『花咲爺絵巻』について」『文教大学国文』46, 2017年, p.57-88.
    https://doi.org/10.15034/0000007616
  • 鈴木重三・木村八重子編
    『近世子どもの絵本集 江戸篇』岩波書店, 1985年.
  • 内ヶ崎有里子
    『江戸期昔話絵本の研究と資料』三弥井書店, 1999年.
  • 図録『幽霊学入門 幽霊の足はいつ消えた?』安城市歴史博物館, 1999年.