資料説明
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白亜紀の地層は、関東地方より西では連続的に分布している。銚子地域の白亜紀の地層はこの連続的分布の東のはずれにあり、我が国の地史を考える上で重要な位置を占めている。また、この地域の白亜紀層中には、堆積構造や化石など当時の浅い海で堆積した証拠が豊富であり、浅い海に堆積した地層の典型としても貴重である。千葉県(房総半島)を構成する地層は大部分が新第三紀(およそ2500万年前)以降の新しい時代の比較的柔らかな地層であるが、銚子地域には、千葉県としては異色の古く堅い地層が露出している。銚子が侵食されずに残ったのもこの地層が露出していたおかげである。 銚子半島東部には白亜紀(1億4、000万年前~6、500万年前)の銚子層群と呼ばれる地層が分布している。銚子層群は礫岩、砂岩、砂岩・泥岩互層などの堆積物からなり、浅海性の軟体動物化石やアンモナイトなどを産出する。銚子層群は、下位より海鹿島層、君ヶ浜層、犬吠埼層、酉明浦層、長崎鼻層で構成される。これらの地層は、沖合から浜辺にかけての浅い海で、嵐の影響を強く受けて形成されたと考えられている。 犬吠埼灯台周辺には、犬吠埼層(約1.19~1.13億年前)が分布している。犬吠埼層は細粒-中粒砂岩ならびに細粒-中粒砂岩・泥岩互層で主に構成される。砂岩には、平行層理のほか、ハンモック状斜交層理など、嵐の堆積物に特徴的な堆積構造が発達している。さらに、これらの堆積構造に伴って、浅い海での波でつくられたウェーブリップル葉理、浅い海の流れでつくられたカレントリップル葉理、などの堆積構造がみられる。また、砂岩には、浅い海の堆積物に特徴的な生物の痕跡の化石であるマカロニクナス(Macar onichunus)が認められる。砂岩と互層する泥岩は一般に砂質で、当時の海底に棲んでいた生物による擾乱が著しい。砂岩の多くは上に凸のレンズ状形態の断面型を示す。犬吠埼灯台周辺の海岸では、犬吠埼層の地層が様々な方向から観察でき、沖合から浜辺にかけての堆積環境で発達した嵐の堆積物と浅い海での様々な堆積物の特徴を詳細に観察することができる。 こうした地層は、白亜紀における浅い海の堆積物の典型として、さらには私たちが毎年経験する台風などの嵐に伴って、海底でどのような自然の営みが発生しているのかを理解する上でも大変重要である。天然記念物に指定し、長く保存を図ろうとするものである。
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