|
解題・説明
|
会津若松市のシンボル的存在、鶴ヶ城。その郭内には、二社の稲荷神社があります。そのうちの一社、太鼓門近くにある鶴ヶ城稲荷神社は、城の創建時から守護のため当地に祀られていたとされ、今でも観光客をはじめ多くの人が参拝しています。この社こそが、本作のモデルです。資料がないため制作年は不明ですが、おそらくは戦前、同じく会津若松市内の追手町付近を描いた《銀杏の道》と、同時期の作品と思われます。木々がうっそうと茂る人気のない境内。鳥居の周辺にはいくつもののぼり旗が静かにはためき、境内を吹き抜ける風を感じさせます。画面奥には青空ものぞき、おそらくは夏の頃の光景でしょう。石造りの鳥居とその右横にある手水舎、続く朱塗の鳥居、そこから奥の本殿に続く石段と、境内の様子が忠実に再現されています。一方、例えば一番手前の鳥居の前に置かれている「正一位鶴ヶ城稲荷大明神」と刻まれた石柱が一本しかない、朱塗の鳥居の後ろにあるはずの、やはり石造りの鳥居や、参道の両脇に配されている狛狐も描かれていないなど、現在とは異なる点も認められます。また手水舎が極端に小さいように感じられますが、これはおそらく、現在の入場券売場の背後にある石垣の上、北走長屋跡付近から見下ろした景色だからではないかと思われます。
|