解題・説明
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現在の鴨川市天津小湊の内浦、小湊の風景。清澄山に向かうために通った天津側の峠道から望んだもの。山道から急に視界が開けた先に内浦湾が広がり、湾に臨んだ集落が描かれている。家並みの外れにひときわ大きく見える屋根が、日蓮上人の誕生を記念して建てられた誕生寺である。山に挟まれた湾のたたずまいや海岸線の形、小湊の断崖の先に浮かぶ大小の弁天島の位置など、いずれも実際の地形にかなり近いもの。画面全体から受ける豊かな臨場感も、種本からの構想画が多い本シリーズ中では群を抜いている。広重は、嘉永5年春に房総旅行をしているが、その実景写生に基づいて描いたものとされている。
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