解題・説明
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冒頭からおよそ四分の三が『北夷分界余話』、残りは『蝦夷島図説』のうちの「稲穂図説」に掲載されている図を写したものである。『北夷分界余話』(『北蝦夷図説』)は、文化5 (1808) 年から2年間にわたる、間宮林蔵の樺太探検の口述を村上貞助がまとめたもの。巻之一「凡例・目次・北蝦夷地・島名」、巻之二「地勢・産物」、巻之三「南方初島居家 器械」、巻之四「使犬」、巻之五「漁猟 交易」、巻之六「鍛冶 冠婚葬祭」、巻之七「ヲロッコ夷」、巻之八「スメレンクル夷上」、巻之九「スメレンクル夷下」、付録「ハラタ・カーシンタ満州入貢 大尾」からなる。本作はその一部の絵のみを写したものである。ただし張り込みの順番にはかなりの錯誤がある。『蝦夷島図説』(ほかに『蝦夷常用集』『蝦夷生計図説』などの書名もある)は、村上島之允の遺稿を養子の村上貞助がまとめあげたもの。いずれもアイヌ風俗について克明に記述した貴重な文献である。イナヲ(イナウとも)はアイヌの儀礼には欠かせないもので、柳などの白い木を削って作る御幣のこと。
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