解題・説明
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弓を手にしたアイヌの男性と、先が二つに割れた銛をもつアイヌの女性が描かれている。絵を描いた人物は不明だが長身で身体をくの字に折り曲げるポーズや顔貌表現、くねったような衣服の表現などは雪好画と類似する。画面上部には前田恭安の賛がある。前田恭安(前田温卿ともいう)は、文化7(1810)年択捉島で捕らえたラソワ島アイヌから聞き出したロシア文字の発音に関してまとめた『氈裘文筌』の著者として知られている。また文化13年9月の箱館山上遊覧を記した山遊碑という石碑が函館公園内に残されている。その当時は箱館奉行所の医者であった。この作品の入手にあたって岡田健蔵が述べるところによれば、昭和10年に、函館開港記念の港祭の全国放送に岡田が出演したところ、大阪からこの作品の鑑定を求められた。その作品には岡田が関心を持っていた前田温卿の賛が記されていたので、先方に割愛を求めて入手することができたという。
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