函館の道内都市に対する小売販売額のシェアは、昭和35年の6.3%から昭和51年の6.5%へと相対的に上昇する傾向にあることが認められる。同様にこのような現象は、道南2支庁(渡島・檜山)管内においても、そのシェアが昭和39年の69.1%から昭和51年の72.3%へと推移していることにも表われている。このような函館市の小売業の相対的な地位の上昇をもたらした重要な要因としては、ヒンターランドの道路網の整備、小売店の専門店化、消費者の消費行動の多様化などが考えられる。
函館市の小売業の相対的地位の上昇傾向と同時に、経営規模の零細性、低生産性、過多性などの特徴も認められる。例えば昭和51年の1店当りの年間販売額、従業者数、従業者1人当りの販売額は道内各都市の中にあって最下低にある。このことは、従業者規模別構成比をとると一層明確になる。すなわち、1店当りの従業者数1~2人の零細規模の店舗数の割合が道内主要都市の中で最も高く、約58%を占めている。このことは、函館市の小売店が生業的で、かつ補完的な家族経営店の多いことを示している。
かつて小樽と共に北海道の市場を二分していた函館市の卸売業は、戦後札幌への経済力の集中、流通再編成等の影響を受けて、往年の威勢の面影はみられなくなってきている。今日の函館の卸売業の市場は、道内をはじめとして遠くは四国・九州と広い範囲にわたってはいるが、その市場構成比率は道内が全体の87.2%と圧倒的に多く、しかも、道内といっても函館市と渡島・檜山支庁管内市場で全体の約80%を占めていることから、函館の卸売業の存在基盤は道南の経済力・購買力に支えられているといっても過言ではない。