帰化植物

74 ~ 76 / 706ページ
 帰化植物の侵入は明治以降全国的に目立ち始め、特に戦後は、在来の植生が剥(は)がれた都市周辺の路傍、宅地、休耕地などに圧倒的な進出ぶりをみせている。これらは、園地や牧野から逸(いつ)生したもの、綿花、羊毛その他の輸入品に付着して渡来したものなどが主であるが、函館地方もその例に漏れず、在来種を、はるかにしのいで繁茂しているものが多い。その主なるものは、
 
カモガヤ、オオアワガエリ、シバムギ、コヌカグサ、ハルガヤ、ナガハグサ、シラケガヤ、エゾムギ、オオスズメノテッポウ、ヒロハウシノケグサ、アオビエ、ヒメスイバ、コニシキソウ、シロツメクサ、アカツメクサ、マメグンバイナズナ、ヘラオオバコ、オオイヌノフグリ、メマツヨイグサ、オオマツヨイグサ、カキネガラシ、イヌカキネガラシ、ヒメジョオン、ヒメムカシヨモギ、ブタクサ、ノボロギク、アラゲハンゴンソウ、オオハンゴンソウ、エゾノキツネアザミ、オニノゲシ、ハルノノゲシ、オオアワダチソウ、ユウゼンギク、ハキダメギク、コウリンタンポポ、セイヨウタンポポ、タンポポモドキ

 
などである。近郊を歩いていて、目に入る野草の半ば以上が帰化植物であると思ってよい程である。
 中には、ブタクサのように花粉の吸引が喘息(ぜんそく)の原因となって、「ブタクサ公害」と騒がれているもの、アオビエ、ヒメムカシヨモギ、ヒメスイバ、エゾノキツネアザミのように耕地の雑草として厄介(やっかい)視されているものも含まれている。
 これら帰化植物の原産地は欧州が最も多く、北米がこれに次ぎ、その他、アフリカ、南米、地中海沿岸、シベリアなど世界各地に及んでいる。適応力が強いので帰化が可能であった種であるだけに、繁殖力は極めて旺(おう)盛なのが普通で、市の郊外、特に湯川方面の住宅地周辺では、オオアワダチソウが他の植物を駆逐して、壮大な群落を形成している場面が目立っている。函館山の尾根筋の車道にも、ハルガヤ、ヒメジョオン、ブタクサ、ヒロハウシノケグサ、カモガヤ、シラケガヤ、オオアワガエリなどが多量に進出し始めている。いずれも、在来の植生を剥(は)いで、帰化植物の侵入に裸地を提供したことが最大の原因と考えられる。

ヒメジョオン(欧州原産、明治初年欧州から直接と北米経由の2ルートを通って渡来した)


ブタクサ(明治初年北米より渡来した)