北海道の旧石器時代遺跡の分布には、2つのブロックがあったことは、本節で前に述べた。すなわち札幌低地帯と勇払原野を結ぶ線で遺跡の分布圏が二分されるが、最近縦長の石刃文化以前の時代で、ナイフ形石器を伴う文化が十勝の上士幌町と千歳市の三角山で発見され、又、すでに道南では樽岸の石器群にもナイフ形石器があって、これらと岩手県和賀郡大台野遺跡のナイフ形石器とを比較した結果、同じ系統の石器であることがわかった。ナイフ形石器は、日本の後期旧石器時代のうちでも古い時代のものであり、およそ2万年前のものと考えられている。千歳市の三角山、樽岸、岩手県の大台野を結ぶ文化圏を考えると、津軽海峡がまだ陸橋によって陸続きであったころ、地質学から見ると1万8000年前に海峡ができたといわれているので、海峡ができる直前ころに人類の交流があって、当時の函館はマンモスなどの動物とその狩人たちの通り道であったことがうかがわれる。