都市とは、人口集積、経済力、生活環境の利便性、そしてこれらのもたらす情報を保有する空間といえよう。本章では、この都市空間そのものを対象としており幕末より明治40年大火以前頃までの都市形成を説明する。具体的には、都市基盤の整備を中心に記述し、それによる都市空間の拡大がもたらす都市形態の変化にも留意している。また、機能的な都市空間全体を「場」と表わし、それがどのような構造によっているかをイメージ化することも試みている。しかし、「場」を構成する生活空間や、劇場などにみる社会的空間についてはほとんどふれていないし、民家および町並などに視点をおく都市景観史的なアプローチも不十分であり、今後の課題となるだろう。