電気事業

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 函館の電灯事業は29年1月の開業であって、札幌、小樽に次ぐ3番目である。しかし、札幌電燈株式会社、小樽電燈舎と比較すると、明治32年以降、払込資本金、各戸引用燈数、収入金において函館電燈所が上回っている。
 函館ではすでに22年に、電燈会社を設置するための発起人会が開催され、資本金4万5000円、株主数61名で株金の払込も進められていたが、23、4年と電気器械の良否に就いて検討を重ねた結果、「追て完全無害なる電燈器の新品出来して収支相償うの見込立ちし上、更に創設を謀るも遅からされは今回は一旦解散…」(24年4月7日「北海」)と議決され、株金が払戻されたという経緯があったのである。28年12月に事業認可された函館電燈所は、東雲町240番地にあって、資本金は12万円(当初払込4万円)、園田実徳の独力経営であった。発電機はポプキンソン式型単相交流二線式で、汽機・汽鑵は石川島造船所製である。29年1月の開業後の模様を同月23日付の「小樽新聞」は「先般来屡々試験の為め点火し居りしか其成績良好にして電柱の建て直しも全く済みたるを以て愈々去十八日より開業し、需要者一般へ点火したりと、尚申込は千燭以上にも上らん勢なりと云う」と伝えている。その後、表9-38の通り、毎年需要の増加があり、30年と35年に増設され、35年11月には、シーメンス式三相交流発電機が導入された。各年の収支は相償う状況となっている。なお、上記のような火力発電による電気事業のほかに、工業用動力を目的とする、より安価な水力電気事業の設立計画も30年代にあったが実現をみるに至らなかった(各製造業の記述において、『殖民公報』の該当業種を参照した)。
 
 表9-38 函館電燈所の推移
年次
払込資本金
引用戸数
引用灯数
収入金
支出金
消費石炭
職工数
 
明治29
30
31
32
33
34
35
36
37
38

 
40,000
40,000
100,000
100,000
120,000
120,000
120,000
120,000
120,000
 
250
330
420
418
448
461
501
511
507
557
 
1,350
1,715
2,160
2,230
2,638
3,260
3,302
2,835
2,728
3,970

 
20,400
25,210
36,040
41,495
47,409
53,401
53,444
49,847
54,189

1,570
19,800
20,530
34,870
39,055
47,409
53,401
53,444
45,857
54,107
トン
127
1,100
2,372
2,462
2,555
2,640
2,680
2,507
2,500
3,000

 
13
 
 
10
14
 
 
13
15

 『北海道庁統計書』ならびに『北海道庁勧業年報』より作成