管理と維持

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 女紅場の維持は、貸座敷、娼妓、芸妓が納める賦金(12年7月以降は娼妓と貸座敷のみ)によって一切が賄われていたことは前記したとおりだが、開拓使時代は、支庁から全額町会所(13年から区役所)へ渡された賦金の中から、取締や黴(ばい)毒検査所の費用を差し引いた残金から女紅場分が責任者の戸長へ回されていた。しかし県時代は、15年の「賦金受払取扱心得」に基づき、女紅場の予算額を月割した額が県から直接下付され、従来積み立てていた毎月の残金も翌月へ繰越、各半年度末には県へ返すことになった。つまり県が直接関与することになったのである。
 次にその費用の内容を少し具体的にみてみよう。15年度上期の受払勘定帳を表にしたのが表13-7であるが、12月は史料が無く、欠けている。「元受」とは、予算を月割して県より配分される女紅場費用のことで、7月の繰越金ゼロは半期末の6月に残金を県に返却したためである。この上期の女紅場予算総額は1426円42銭6厘となっており(明治15年『賦金関係書類』道文蔵)、月割すると約243円余が配分されることになる。ところが10月以降は賦金で探偵費年額200円も負担することになったため、月々の「元受」が極端に減額されている。一方支出では消耗品費や特に老朽化した建物の修繕費の支出額がかなり伸びている。全国的な不景気のこの時期、賦金収入も停滞あるいは減少の中で、女紅場の経営は苦しかったことが想像され、この経営難が数年後の廃業の一因にもなったものと思われる。
 
 表13-7 15年度上期の女紅場経費
  15年7月15年8月15年9月15年10月15年11月
受 け 高 総 額
円 
216.00
円 
171.44
円 
386.97
円 
338.72
円 
301.31
 内 


 訳
前月繰越金
租税課より元受
仮払い分
家賃収入
賃金収入×1/3
  (和洗濯)
  (西洋洗濯)
  (裁縫)
試験裁縫品払下
支場用地買入

216.00







48.61
104.10

18.73





39.89
347.08







250.22
70.00

9.37
9.13
1.54
6.95
0.64

101.26
90.00

9.37
2.61
1.02
1.35
0.24

98.07
支 払 い 高 総 額
167.39
131.55
136.75
237.46
299.09



役 員 給 料
教 員 給 料
勉 励 賜 金
諸 雇 い 給
備  品  費
消 耗 品 費
諸 賄 い 料
修  繕  費
印  刷  費
雑     費
運  搬  費
台町支場買入代
34.30
54.50
30.00
24.48
5.03
14.27
4.81




36.00
54.50

26.70
1.25
2.80
4.81

4.04
1.45

36.00
59.17

20.50
1.00
13.25
4.64
1.12

1.07

36.00
58.50

20.50
1.00
92.11
4.81
15.80

1.74
7.00
36.00
56.66
6.00
30.50
1.10
53.95
4.65
12.13

0.03

98.07
差 し 引 き 残 額
48.61
39.89
250.22
101.26
2.22

 明治15年「献金関係書類」より作成(銭未満は4捨5入してある)