昭和九年
この研究資料から、当時として、いかに早期に、しかもたくさんの収穫をあげるかということに関心が払われていたかがわかる。
結論は、種子薯に小粒種塊と大粒切断種塊を使用した場合では、大粒切断種塊の方が、四日も早く発芽が出揃うし、開花は九日早く、落花は四日早くなるし、収量でも七五貫の差がつくという事実を示している。早く発芽し、開花、落花も早い分だけ薯が完熟できるわけである。その後二年間の実験によっても大粒切断種塊の方が、それぞれ六七貫、七〇貫と収穫が多くなっている。亀田では、浴光催芽法(種子薯を約一か月温床ハウスに入れ、発芽させてから播種する方法)は昭和二十二、三年ころからとり入れられた。この方法によると、一か月早く完熟したり、収穫することができる。しかし、戦前ではそういう方法も知らず、ただ種子薯を二つに切って、芽出しもせずにそのまま畑に植え付けていた。
種子薯の切り口に木灰をつけて消毒すればよいことはわかっていたが、よほど熱心な人でなければ実行しなかったし、今のように土壌の中に雑菌も多くなかったとみえて、そこから腐敗することもめったになかった。