馬鈴薯には、葉の裏に菌がついて、葉が褐(かっ)色になり、最後には黒くなって枯れていくというベト病や、葉が縮んでしまうという萎縮病もあった。土中ではケラや針金虫に食いあらされた。
ベト病には硫酸銅と生石灰をまぜたボルドー防剤がよく効くといわれたので、薬を調合し、背負いの噴霧器で消毒した。空気ポンプを押し押しかけるので、一反歩を消毒し終わるのに二時間はかかった。種子薯の場合にはこれを三回繰返すように指導を受けたが、なかなかその通り実行することは困難であったという。農業技術の進歩や品種改良などによって反当り収量も漸次増加してきて、昭和元年の反収は二六〇貫、同二年は三二五貫、同三年は四五〇貫となっている。