いもの収穫
馬鈴薯のとり入れは八月上旬から始められた。三本鍬(ぐわ)や平鍬を使って土と薯をいっしょに起こす人、両手で土中から薯をさがし出し、薯籠(かご)に入れる人と仕事を分けて行っていた。この作業には、夏休みに入った小、中学生たちも手伝った。農家では、薯の掘り終わったところからすぐ大根の種まきを始めた。掘ってはまく、掘ってはまくという農作業がお盆のころまで続いた。掘った薯は俵に一六貫(六〇キロ)ずつ詰めて、その上を更に荒筵(むしろ)で包むという二重包装にした。これは薯の損傷を防ぐための工夫であった。ほとんどの農家では、秋に収穫したらすぐ畑に通称薯穴を掘って貯蔵した。夏用の薯穴は地面にただ薯を積み上げ、その上に土をうすくかぶせるだけのものであったが、越冬用の薯穴になると、土を深く掘って薯を積み、上を覆う土も厚く、厳寒の凍結に耐えるようにした。普通、翌年の二月いっぱいまでそのままにし、三月十日を最終期日として薯出しを終わり、道内をはじめ、本州、朝鮮、満州などへ送った。
薯は種子用だったので、選別には慎重を期し、大きさ、虫害の有無を調べた。中位の大きさの薯は翌年の種子薯に残したり、小さなくず薯は澱粉用原料、家畜の飼料に回した。