本村の農業立地条件は地形、土質、田畑率等において高丘地帯と平坦地帯とでは相当の差異があり、特に高丘地帯は戦後土地改革により開拓された地帯が多く、その営農のぜい弱性はまぬがれない現状である。従って農業経営組織もこれらの立地条件に即した方向に進展しなければならない。すなわち高丘地帯に属する畑単作農家三〇〇戸の経営する約一、二〇〇町歩の耕地は酸性土壌多く、加えて、有機質の施肥寡少のため、地力は逐年減退して生産量は低下の一途をたどっているので、耕地改良と共に種馬鈴薯を主軸とした有畜(乳牛・綿羊)多角経営に移行して、これに伴う各般の経営施設と、農道およびこれに接続する開拓農業道路を完備して生産を増強し、農業経営の安定を図る。
一方、平坦地帯は水稲、馬鈴薯、蔬菜類を中心とする有畜(中・小家畜)多角経営を完成させ、耕地改良、土地整理、耕種改良、用水施設の完備をして合理的経営に躍進させる。
二 農業経営の目標
ア 最終年における形態を有畜立体農業をめどとする。従って種馬鈴薯裏作に、飼料作物の作付および牧草畑を増加した立地条件をもととして乳牛や中・小家畜を導入する。
イ 種馬鈴薯の作付統制を行い、増産と品質の向上を図る。
ウ 耕地改良、自給肥料の増産、技術の高度化により二割以上の増産を図る。
エ 蔬菜の作付統制を図り、高級蔬菜を栽培する。
オ 作業能率向上のため、優良農具を導入する。
三 計画実行の態勢
農業協同組合と連絡を密にして農業改良普及員との指導力を得るものとする。実行に当っては議会産業委員、農業委員による実行委員を村と直結せしめ、更に部落農業実行組合長を普及協力員として部落自体の実行を推進させ、全農民をしてこの形態に満足して入らせながら農協が事業主体となってこの事業を完成させる。
以上は農業振興五か年計画策定の大要であって、これら事業の遂行は二十七年度以降の年次具体計画により実施に移されているが、事業の遂行に当っては国の予算または金融措置にのみ依存することなく、農民の積極的熱意を取入れ、自主的に目標を達成するよう推進している。実施された年次具体計画の大要は次のとおりとなっている。
一 総 括
ア 五か年総合計画の一環として、本村多年の懸案である東山・陣川開拓地約八〇〇町歩の開発を促進するため開拓道路を開さくする。
イ 村内の低位地力を向上良好にして、基盤である土地改良事業に重点をおく。
ウ 病害虫の徹底防除に努め、優良農具を導入して労力配分の適正化を図る。
エ 家畜の導入を促進し、併せて農産物の飛躍的増収を図り、一面家畜生産物により現金収入を増加せしめ、農家経済の安定と生活の向上を図るものである。
二 主な事業の概要
ア 土地条件の整備について
○開拓道路の開さく工事を二、七五〇間
○入植者による畑の開墾二〇町歩
○暗渠排水工事五〇町歩
○客土一〇〇町歩および区画整理五〇町歩
○酸性土壌改良二〇〇町歩、心土耕一〇〇町歩
○耕地利用を便にするため農道を七、〇〇〇メートル設置
○灌漑用水の不足を緩和するため笹流川にダムの築造に着手(二七、二八年継続)。
○海洋性的気候の被害を減ずるため、耕地防風林造成の初年として一〇町歩を植樹する。
○畜産振興のため共同放牧地二〇四町歩を設置する。
イ 生産施設の拡充について
○温床苗代一六、〇〇〇坪を行う。
○水稲・馬鈴薯の採種圃四五町歩経営
○自給肥料増産のため堆肥盤を一五〇基、および糞尿溜一〇〇基を完成する。
○馬鈴薯裏作の肥料畑増加と高丘地帯の飼料畑増加を図る。
○乳牛六五頭、綿羊一二〇頭を導入し、厩肥の増産により土地改良とあわせ地力を増進する。
○優良農具は動力耕耘機五台、畜力農機具セット四〇組を導入し、労力を節減せしめ、余力をもって家畜の飼育と副業を組入れる等多角的農業経営に移行する。
ウ 経営生活の改善について
○無電灯農家の電化施設を促進するため、とりあえず二〇戸の配電を完了する。
○村内の粗悪林を優良薪炭林に改良し、自家薪炭の自給を確立せしめるため、山林一〇〇町歩を植樹する。
かくして、亀田村農業振興五か年計画による実施後の実績状況については、昭和二十七年四月と二十九年四月ならびに三十一年九月現在の状況表を左に掲げる。
農機具及び施設機械
家畜飼養戸数及び飼養頭数
森林面積
主要農産物
広狭別耕地面積