○亀田市を廃し、函館市に編入することについて
○亀田市を廃し、函館市に編入することに伴う財産処分について
○亀田市を廃し、函館市に編入することに伴う議会の議員の在任について
以上合併関係の三議案を一括上程し、九月七日には質疑を終え討論を行った。
午後六時五十分討論にはいり、賛成と反対の立場から、交互に登壇した。
まず反対の立場から佐々木正議員は、
「合併形式が対等でなく編入となったこと。合併後の選挙区は亀田を特別選挙区として人口に比例して行うべきこと。市役所の建設地は総合的に検討すべきこと。税制の均衡について再検討すべきこと。七か年間の了解事項の執行の監視体制が法的に不十分であること。市民に対してのP・Rが不足であること。時期尚早であること。」などを挙げた。
次に亀谷利春議員(賛成)は
「亀田市と函館市の生活圏が一体化していること。建設計画の費用七か年二九〇億円によって、生活環境の整備、社会福祉や教育文化の施設、産業基盤の整備ができるので、市民の要望にこたえるものであること。」を主張した。
寺田八郎議員(反対)は
「市長は共産党との政策協定を破棄したこと。建設計画がローリング方式であること。工業団地の計画が明確でないこと。今日まで提出された資料では安心できないこと。下水道の負担金を新たに納めなければならないこと。交通問題では市バス路線の拡張は急にはできないこと。直接請求による住民の意志を尊重して住民投票を行うべきこと。合併についてのアンケート紛失について責任をとるべきこと。」などを挙げて鋭く市長に迫った。
吉田二郎議員(賛成)は「合併は両市民の願望であること。陳情請願者が二万六、〇〇〇人余にものぼること。歴史的現実的にも一つの生活圏であること。新しい市政を待望する。」と結んだ。
田中本司郎議員(反対)は
「直接請求を尊重すべきこと。財産処分の問題が明確でないこと。議員の在任による報酬について問題があること。アンケート集計の紛失について疑惑があること。」を強調した。
伊藤安昌議員(賛成)は
「建設事業計画の背景は人口急増が要因であること。互いに協力して将来市民が共に幸福を享受できるよう基礎をつくるのが合併最大の理由である。」と両市民の協力を期待した。
土井勝雄議員(反対)は
「住民不在の合併であること。函館市の都市像がはっきりしないこと。工業用地の場所も明らかでないこと。今回の合併は国盗り物語であること。議員の在任による報酬も問題があること。自治振興調査特別委員会の活動を考えていないこと。主体性のない合併協議会であり、協議会にも疑問があること。建設計画の金額に問題があること。合併しても亀田はよくならないこと。」を強調した。
丹信樹議員(賛成)は
「合併協議会で検討した結論により、生活優先の政治、福祉行政の充実を期し、住民の幸せを強化することを念願する。」と述べた。
平野重治議員(反対)は
「合併の総合ビジョンが明確でないこと。自治振興調査特別委員会の結論を待たなかったこと。財産処分の点が明確でないこと。アンケートの問題がはっきりしないこと。直接請求の問題を考えていないこと。」を挙げた。
鈴木勉議員(賛成)は
「自治振興調査特別委員会の審議の実態について説明し、その結論が出ていない点が反対の理由にならないこと。合併により新しい町づくりをすること。合併は市民参加の新しい出発点である。」と主張した。
田中栄治議員(反対)は
「合併は保守党のお先棒かつぎであること。地方自治を守るべきであること。革新市長が中央集権化の矢野市長の行政区に編入するのは矛盾していること。直接請求、アンケートの問題もあること。合併協議会における決定にも問題があること。」を主張した。
迎町春光議員(賛成)は
「住民多数の願望を生かすこと。」と明快簡潔に賛成した。
山本朝一郎議員(反対)は
「合併形式について疑問があること。合併協議会の設置の仕方に問題があること。アンケート問題がはっきりしないこと。市職労の反対に対し市長が説得できないこと。十二月一日にこだわらず合併特例法の期限五十年十月まで十分審議を尽くすべきこと。」を挙げて強く反対の意向を表明した。
最後に賛成の立場から松橋時雄議員は
「生活圏、経済圏の一体化、三〇万程度の人口による都市の充実、行政のむだを省き一体化。」を挙げ、討論の最後を締めくくった。
亀田市議会で合併議決
この日、議長席には副議長の若松弘が着き、討論の終結を告げ、採決の結果、賛成一八、反対九をもって原案どおり可決された。時に午後十一時十五分、まことに歴史を画する議決であった。傍聴席には市民約一〇〇人が詰めかけていたが、混乱はなく、静かに緊張した議場を見守っていた。
このため、地方自治法第七条第一項の規定により、四十八年十二月一日から亀田市を廃し、その区域を函館市に編入すること、亀田市有財産の権利義務はすべて函館市に帰属すること、亀田市の議会議員は函館市の議会議員の残任期間(五十年五月一日)を函館市の議会議員として在任することになった。
これにより両市の合併は事実上決定的となり(函館市議会では九月三日合併議決済み)、すでに合併協議会において合意に達している二三項目の実施による新しい「まちづくり」に大きくその第一歩を踏み出すことになった。
翌八日、請願第三号(「住民投票の結果が出るまで合併議案の議決を待て」との趣旨)について、事務局から、「すでに合併議案を議決しており、審議を続けるのは適当でないから『みなし不採択』にすべきである。」との見解が述べられ、採決の結果、賛成多数で、みなし不採択とした。
九月八日、両市から道と渡島支庁に合併申請の関係書類が提出され、十月に至って、道議会総務常任委員一行が亀田、函館両市を視察懇談し、十月九日、第三回定例道議会において両市の合併を承認した。これにより道知事より自治省に対し合併について申請することになった。
注 討論の中の町政アンケート問題について
町政アンケートは昭和四十五年六月、亀田町建設十か年計画作成後、その具体化ならびに新都市計画法による地域指定にあたり、住民意識を把握して行政資料にするために行ったものである。
調査の内容は次のとおりであった。
○ 町政に対する関心度について
○ 亀田町に対する行政期待について
○ 公共的事業の希望について
○ 広域行政に対する認識について
○ 函館市との合併問題および市制施行問題に対する住民意識について
調査方法は四十四年十二月作成の選挙人名簿により無作為に五%(一、三七四人)を抽出して調査対象とした(実質対象は一、二九九人)。回答は六八八通(五三%)であった。
調査項目の「函館市との合併問題」について、その結果を発表すべきであると主張して、合併反対派の議員が激しく市長を追求したが、市長はこれに対して、町政アンケートの集計表は紛失したため発表不可能との答弁に終始した。