一級町村制では村長は村会で選挙し長官が認可するものとなり、町村長補佐として助役も置かれ、給料・旅費なども町村が支出することとなった。村長には、大正三年から村長の職にあった第五代目の村長加藤亀五郎が六月の村会で選出され、北海道庁長官に認可された。なお、加藤が昭和二年まで二期八年村長を務めた後は、桜井栄三郎(二期八年)が村長となり、ついで宮島与作(二期八年)、西沢勇一(昭和十八年から二年)と続いている。
村会議員選挙では、公民資格(三年以上住居、地租年額四〇銭以上、直接国税二円以上、もしくは耕地、宅地三町歩以上所有)が設定され、一、二級の等級選挙制(半数改選で任期六年)となり、議員の定員も人口に応じて八人から二四人と増加され、銭亀沢村の議員定数は一六人となった。また、村会の議決事項も、村条例の設定ならびに改正ができるようになり、村費支弁事業、基本財産および積立金穀などの処分、村有財産および造営物の管理方法などを審議する権限が付加された。
村会議員は大正七年に改選がおこなわれたばかりであったが、一級町村制施行直後に一、二級選挙が実施された。その後、二回、半数改選選挙がおこなわれ、衆議院議員選挙が普通選挙制となると、市町村議員選挙にも普通選挙制が導入された。銭亀沢村でも昭和三(一九二八)年の選挙から普通選挙が実施され、定員も一八人となった。これらの選挙結果を示したのが表1・1・10である。
ところで、昭和四年の木古内村、知内村、同五年の上磯町、戸井村、同六年の函館市、亀田村、同七年の大野村と道南の市町村では軒並みに大字を廃止して字を整理する作業がおこなわれた。銭亀沢村でも昭和八年十月二十五日、それまでの大字小字を廃止して中字的な字とする整理が実施された。
廃止された大字ごとに新しく整理された字を示すと表1・1・11のとおりである。なお、廃止された小字で新しい字に採用されなかった字名は、大字石崎村では、谷地町、中村、目名町、中鶴澗など、大字銭亀沢村では、本村、冷水、古川尻、長坂など、大字根崎村では、土場、根崎浜、寒坂などであった。
表1・1・10 村会議員選挙結果2
大正8 ,2級選挙 | 大正半数改選 | 大正4半数改選 | 昭和3選挙 | 昭和7改選 | 昭和改選 | 昭和5改選 | |||
氏 名 | 氏 名 | 氏 名 | 氏 名 | 大字名 小字名 | 氏 名 | 字名 | 氏名 | 氏 名 | |
1級 | 木村豊吉 | 木村豊吉 | 木村豊吉 | 銭亀沢村湊 | 木村豊吉 | 湊 | 木村豊吉 | 川村弘 | |
木村巳之松 | 木村巳之松 | 木村巳之松 | 銭亀沢村古川尻 | 木村巳之松 | 古川町 | 木村巳之松 | 佐藤与五郎 | ||
松代覚蔵 | 村田平太郎 | 村田平太郎 | 石崎村 目名町 | 村田平太郎 | 石崎 | 村田平太郎 | 村田平太郎 | ||
中宮亀吉 | 中宮亀吉 | 中宮亀吉 | 志苔村 志苔 | 中宮亀吉 | 志海苔 | 中宮亀吉 | 中宮亀吉 | ||
高野福三郎 | 高野福三郎 | 高野福三郎 | 志苔村 志苔 | 高野福三郎 | 志海苔 | 高野福三郎 | 高野福三郎 | ||
瀬川巳之松 | 瀬川巳之松 | 竹内助次郎 | 銭亀沢村本村 | 津田久次郎 | 銭亀 | 岩田久次郎 | 岩田久次郎 | ||
井口藤太郎 | 沢田弥五郎 | 松井菊松 | 石崎村 谷地町 | 松井菊松 | 石崎 | 松井菊松 | 松井菊松 | ||
川島仙蔵 | 川島仙蔵 | 瀬川寅吉 | 根崎村 寒坂 | 寺谷勇平 | 根崎 | 和泉寅吉 | 和泉寅吉 | ||
松田米松(補 | 宮川熊太郎(補 | ||||||||
2級 | 沢田富五郎 | 平田久蔵 | 平田久蔵 | 銭亀沢村中野 | 小林仙吉 | 銭亀 | 和泉吉三郎 | 村下又四郎 | |
本間勝太郎 | 本間勝太郎 | 本間勝太郎 | 銭亀沢村古川尻 | 本間勝太郎 | 古川町 | 九島千代治 | 九島千代洽 | ||
黒高久太郎 | 黒島久太郎 | 沢田富五郎 | 根崎村 根崎浜 | 沢田彌五郎 | 根崎 | 沢田彌五郎 | 柴田梅太郎 | ||
九島喜代吉 | 九島喜代吉 | 九島喜代吉 | 銭亀沢村湊 | 九島喜代吉 | 湊 | 九島喜代吉 | 九島喜代吉 | ||
高井豊作 | 高井豊作 | 高井豊作 | 石崎村 石崎 | 川島邦彦 | 石崎 | 川島邦彦 | 川島邦彦 | ||
中村長兵衛 | 中村長兵衛 | 中村長兵衛 | 石崎村 白石 | 阿部雄蔵 | 石崎 | 山田徳五郎 | 山田徳五郎 | ||
沢田松之進 | 沢田松之進 | 沢田松之進 | 石崎村 石崎 | 沢田松之進 | 石崎 | 沢田松之進 | 沢田義三郎 | ||
菊地初太郎 | 菊地初太郎 | 森川盛 | 石崎村 中鶴澗 | 森川盛 | 鶴野 | 川村沢蔵 | 川村沢蔵 | ||
大谷安兵衛 | 根崎村 土場 | 亀井貞吉 | 根崎 | 大谷安兵衛 | 大谷安兵衛 | ||||
福島平次郎 | 根崎村 高松 | 福島平次郎 | 高松 | 福扁平次郎 | 福島平次郎 |
「函新」により作成、昭和7年の改選は昭和8年および昭和9年『村勢一班』による
注)大正8~14年までは1、2級選挙
昭和3年から普通選挙
昭和7年の改選欄の小字名と字名は、8年に大字小字を廃止して字に整理したので、この関係を示すために入れたものである
(補とあるのは途中退任者があり、これの補欠当選者である
表1・1・11 新しい字名(昭和8年)
昭和9年『村勢一班』により作成