田名部、大間間の鉄道は、下海岸と目と鼻の先に位置する青森県下北半島北部を走る鉄道として、釜谷鉄道と同じく大正十一年の改正鉄道敷設法予定線の本州の部「一」に「青森県田名部ヨリ大畑ヲ経テ大間ニ至ル鉄道」(大正十一年「公文類聚第四十六編巻二十四」国立公文書館蔵)として挙げられた、大湊軽便線田名部から大畑経由で大間に至る全長二八哩の鉄道である。東北線野辺地から下北半島方面へ分岐する大湊線は、大正五年九月に軽便線として着工、大正十年九月二十五日に野辺地、大湊間が全通しているが(『大間町史』)、さらに北端の大間までの鉄道として計画されたものである。
「鉄道敷設法予定線路一覧」(前掲)には同線の重要貨物として輸出の部に「活鮮魚、乾魚、木材、硫黄(大畑)」、輸入の部に「穀物、食塩、砂糖、石油、陶磁器、金物、雑貨」が挙げられ、敷設理由として前述のとおり下北半島開発とともに、対北海道連絡線となるとしている。