さて、函館東消防署古川出張所の観測では、平成六年の二月から十二月に七三三ミリの雨が降っている。同じ時期に空港では七九二ミリの雨が降っていたので、古川町は約七パーセント少ない。年間総雨量も同じ割合であると仮定してみると、銭亀沢古川町付近での年降水量は九〇〇ミリ強と推定される。
また、かつて函館海洋気象台では、戸井町汐首に雨量観測所を設置し、四月から十一月の雨量を観測していた。このうちの五年間の記録によれば、五月から十月の半年の間で、汐首の降雨量は約六九〇ミリであった(川島孝広、藤田英治、宮本英文「汐首、蛾眉野の降雨」平成元年度道南地区気象研究会資料)。同じ期間の美原の雨量は六七〇ミリであったので、少なくとも夏場は美原と同程度かそれ以上の雨が降っていたことになる。一方、銭亀沢から清水山などを隔てた函館市蛾眉野町では、年平均降水量が一四〇〇ミリを越える。
これらから推定すると銭亀沢地域の年間降水量は九〇〇ミリから一〇〇〇ミリだが、山沿いや東部の地域では、海岸部の空港や古川町よりも雨量が多い可能性もある。
一日の降水量がそれぞれ一ミリ、一〇ミリ、三〇ミリ以上の日数を比べてみる(図2・2・7)。一ミリではほぼ年間を通して美原の日数が空港の日数を上回り、年合計で二五パーセント以上多い。しかし日降水量一〇ミリと三〇ミリの日数では、美原と空港の日数はほぼ同じになっている。空港の三〇ミリ以上の雨は七月から九月の夏場に多い。
この傾向は他の資料でも確認することができる。ひとつは一時間降雨量の第一位記録で、美原の五八・八ミリ(昭和十八年七月二十九日)に対し、空港では八二・二ミリ(同四十七年八月三日)と二〇ミリ以上多い。一日の降雨量の記録も美原は一三六・二ミリ(同三十三年八月十八日)だが、空港は一七四・五ミリ(これも同四十七年八月三日)で、いずれも美原より強い雨が降っていることを示している。
図2・2・6 月別の降水量
(上)美原と函館空港 (下)銭亀沢古川町と戸井町汐首
図2・2・7 降水日数と年間積算日数