〈昭和三十八年一月十六日の海難〉

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 この日は、上空約五〇〇〇メートルに氷点下三九度以下の強い寒気が入り込み、大気の状態は不安定となっていた。冬型の気圧配置だが、津軽海峡の西海上には小低気圧があった(図2・2・18)。この低気圧が北上するにつれて津軽海峡沿岸は突風に見舞われた。大間崎灯台の資料によると、朝方の北東風が昼前に南風に変わったが、風はまだ弱かった。しかし正午の観測から南西風が急速に強まり、一三時には二八メートルの雪を伴った暴風となった。
 津軽海峡の戸井沖には、約一五〇隻の小型漁船(一~二トン)が出漁していたが、このうち六〇隻ほどは事前の気象情報や自己判断で帰港したといわれる。しかし、残った約九〇隻は操業を続けて暴風に遭遇し、七隻が遭難、一三名の行方不明という悲惨な海難となってしまった。
 遭難した漁船は戸井町など銭亀沢以外の所属であったようだが、局地的な顕著現象への対応の貴重な教訓として今後も記憶にとどめておくべき事例である。

図2・2・18 昭和38年1月16日09時の天気図