〈昭和六十二年八月三十一日の塩風害〉

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 台風第一二号は渡島半島の西海上で温帯低気圧に変わり、九月一日の朝には道北へ到達した(図2・2・19)。台風の進行方向の東側にあたった函館では、最大風速一二・八メートル、最大瞬間風速三四・八メートルを観測した。風向は南南西で、銭亀沢地区にとってはまともに海から吹き付ける風である。また函館の雨量はわずか一・五ミリで、典型的な「風台風」であった。
 この強い海風によって運ばれた海水の塩分が、函館地方の樹木や農作物に多大な塩風害を与えた。樹木の葉を採取した上平幸好の調査(「台風12号が函館地方の植物にあたえた塩風害について」『渡島半島周辺の風』講演会予稿集)によれば、検出された塩分濃度は大森浜から銭亀沢の海岸で特に高く、市内中心部の二、三倍の高濃度であった。上平は「特に海と直接に面して、さらに背後に山々が迫っている銭亀沢では、圧縮されたような形で塩分が集中する傾向にある」と指摘している。

図2・2・19 昭和62年9月1日09時の天気