海藻類の利用と地方名

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 銭亀沢を代表する海藻はマコンブであり、ガゴメやホソメコンブも発生の多い年には漁獲される。一般にマコンブは冬から春の親潮接岸期に水コンブと称する細い一年コンブとして発生する。水コンブは大時化(しけ)や二年コンブとの混獲などで一部は失われるが、二年目の春先には先端の枯れ落ちた根元から「持ち上げコンブ」と称する新しい葉体が再生し、急激に伸長して、夏には幅広で厚いりっぱな二年コンブとなる。一方、ホソメコンブは温暖な年に発生が多いといわれ、寿命は一年であって越年することは稀である。これらのコンブ類は主に天日乾燥しマコンブとガゴメは折り昆布に、ホソメコンブは棒切り昆布に加工される。マコンブは「削り昆布」「刻み昆布」「昆布茶」「昆布蒲鉾」などの高級加工品向けで、特にガゴメは粘液質が多いため「とろろこんぶ」などの原料となる。ホソメコンブは「佃煮」やヨード原料となる。
 ワカメはかつて若いものを採取し、天日乾燥して「天然ワカメ」として出荷されたが、現在では養殖ものが出回り、価格が安いため販売目的で獲られることは少ない。チガイソもかつてワカメの代用品として食用にされたが、現在ではほとんど採られない。チガイソはマコンブと同じ岩礁に生育し、三年以上も枯れずに残って岩盤を占領するため、コンブ類の生育を圧迫する雑草として除去される。
 その他、食用に供される海藻の主なものは、冬から春にかけ平磯の岩盤上に着生するスサビノリやウップルイノリなどのイワノリ類、フクロフノリ(ふのり)、マツモ(まつも・まつぶ)、エゾツノマタ(みみ)などである。イワノリ類は大量に採れた場合は簾干しで板海苔に加工し、フノリは生のまま、あるいは乾燥して販売することもあるが、少量ならばこれらの海藻類は汁物の具などとして食べられる。また、特にマツモは三杯酢にも向くという。ヒジキは春に一〇センチメートル程度になったものを干して煮物などに用いる。
 アナアオサ、ボウアオノリなどのアオノリ類は、沖縄地方では汁物などに多用されるが、銭亀沢では食料難時代には食べたともいうが、現在はまったく採取されない。また、マクサ、オバクサなどのテングサ類も寒天原料として採った時代もあったが、これも現在利用されていない。