海面にわき上がってきたイカは、ハネゴ二本を両手にもって釣った。この技術は、修練を必要とした。ハネゴを使う頃合いは各自に任せられた。ハネゴは桐製のダイ(座又ともいう)に竹の腕を付けたもので、その先にテグスを付け、竹ハリを装着した。竹ハリにはソコヤマデ同様モガを巻き付けた。竹ハリの竹は佐渡、新潟のマダケ(真竹)を使用し、割って、煮て干しあげ、固くしたものを削って作った。イカ針屋が作って販売した。
ハリは鉛の重さで逆さまに落ちるので、引くと海中で踊るように見える。鉛のオモリは名前はタケタマという。ハネゴの動かし方で、針の踊りが違い、イカの付きが違った。
ハネゴは佐渡で作ったものが良く、ザマタ(座又)に付ける竹はニガタケ(苦竹)を使用し、火を入れてまっすぐにした。ニガタケは皮が厚いので、長く使っても水を含まず、竹のしなりに変化がなかった。タケサオは四本一組で販売し、これを漁師が購入してザマタに取り付けた。
ハネゴは両手で一本のハネゴを扱い、タケの長さの分だけテグスをつけて使用した。長さは一尺六寸、八寸、二尺の三段階あって、タケサオが長ければ、それだけ深いところのイカがつくので有利だが、それだけ力も必要となった。
タケサオの善し悪しは元が太くて先が細く、節の間隔が短く、節がそろっているのがよいとされた。これは、先が細いと先だけが曲がり、手元に狂いがこなかった。普通のサオタケが米一俵七円か八円の時代、一本四、五銭であるのに対し、高級品となると四本セットで五円も六円もするものがあった。