生業による住宅形式

387 ~ 387 / 521ページ
 銭亀沢地区の住宅形式は大きく三種類に分類できる。切妻屋根の漁村住宅には、(a)規模が小さく、整形四間取で表側に座敷のある平面を有する自営漁家住宅と、(b)土間を隔てて下手にも室を設け、上手裏側に座敷を配置する大規模漁家の住宅があり、(c)農村住宅は茅葺寄棟屋根で、旧亀田村に見られるチャノマ(茶の間)を表側に取った平面形式である(表4・3・1)。このうち、自営漁家住宅は独立自営の昆布漁家の、大規模漁家の住宅は鰯漁を経営する網元漁家の、亀田型農村住宅は内陸部の農家の住宅形式に、それぞれ対応している。また、前項「銭亀沢の集落形態」で述べたように、屋敷地も同様に、それぞれが生業に即した特徴ある形態をしている。すなわち、住宅所有者の生業が、屋敷地と住宅の形式を決定しているのである。
 このほかに、自営漁家住宅の別種に、大規模経営漁家の経営する鰯漁に従事したり、遠洋漁業や他地域の漁場に出稼ぎにいく漁民層および給与生活者の住宅である(`a)がある。この雇用漁民住宅は、ほぼ自営漁家住宅と同形式であるが、屋敷地の形態は異なり、昆布乾燥のための干場およびこの地域で雑蔵と呼ばれる加工場がなく、従来の集落のはずれや国道から離れた段丘上に分布している。屋敷地の開発時期が、自営昆布漁家のそれよりかなり後であるにもかかわらず、給与生活者の住宅が自営漁家住宅と同形式であることは、両者の住い方に違いがあまりないことをうかがわせる。

表4・3・1 銭亀沢地区の各住宅形式比較表
注)住宅形式は一般的な傾向を示したもので、昭和30年代以降の変化は含まない

 

図4・3・6 各住宅形式比較平面図