結納

420 ~ 420 / 521ページ
 キメザケが嫁方の家長の承認を得る儀礼であるのに対し、結納は両家が婚約を確認する儀礼であった。結納は大安吉日を選んでナカドが婿方の親戚代表(本家の主人など)とともに結納品を持って嫁の家にいった。夜になることが多く、家印のついた提灯を下げていった。結納品は角樽もしくは一升瓶、折昆布、するめ、それに反物やニラミザカナ(あぶらこ・あかだい)などが付くこともあった。それに嫁方の家族への土産として下着や履物を持参した。昭和二十一年の時は物資不足で結納金だけということもあった。金額は時代や家柄によって一定しないが戦前で一〇円、戦時中で一〇〇円という記録がある。
 結納の席には嫁方から嫁、両親、親戚代表が出席し、挨拶のあと神棚に灯明、お神酒(みき)をあげ、受納した品は床の間に納めた。このあと嫁方で用意した手料理で祝宴となり、この席で婚礼の日取りが決められた。
 結納返しは、「結納半返し」とか「袴代」として一割程度を返すことが習慣となっているところもあるが、この地域ではほとんどしなかった。